相似と普遍性

系統的にその起源を同じとしない、 しかし形やはたらきが非常に似ている構造を相似と呼ぶ。 この相似構造をつくるのに働く遺伝子が「相同遺伝子」であることがたくさん報告されている。 これをどう考えるのかである。   …

多様性と普遍性

学生の頃、前館長の岡田節人さんに言われた言葉を今でも覚えている。 「多様性の中にのみ普遍性は成立する」だ。   特にこの10年ほど、私は発生過程の共通性・普遍性について考えている。 これは遺伝子の共通性ではなく…

相似と相同

一般論としてははなはだ書きにくいのだが、 相似と相同の概念についてすこし考えてみる。   相似とは、かたちやはたらきが似ていても 系統進化的にまったく異なる成り立ちで形づくられた構造を呼び、 相同とは、かたちや…

寝てばかりいると・・・・

腰痛で動けなくてとにかくごろごろ寝転んでばかりいると 普段ぼーっと考えていることを考え続けたりしますね。 で、この連日の進化に関する雑文なども、 もう少しまとめ直さなければならないことは分かっているのですが、 なんとなく…

進化を考える上での階層性

さて、たとえば発生拘束を受ける類いの変異とはいったいどういったものなのか? ダーウィン流の自然淘汰で議論可能な変化はどのようなものなのか? その他にもこの中間のような淘汰圧もあるだろう。 これらは、分類群の細かさ(種間の…

進化のきっかけ

進化のきっかけなんて、本当のところはおそらく誰にも分からないだろう。 どうしても現存の生物の知見しかないから、 その当時の事実は推測するしか我々にはできないのだから仕方ないと思う。   そこで、やはり現存の生物…

偶然

科学者としてもはやこれを言ったら不適切かもしれないが、 進化なんて論理的な説明がつかなくてもいいと思うことがある。 これは、非論理が許されるというのではない。 ただ、たとえば数億年に一度しか起こっていない現象について考え…

かたちの進化

進化の原動力はゲノムに生じる変異であるのは間違いない。   ゲノムの変異というものを進化の文脈で具体的に考える場合に、 どうしても世代間の変化とか環境との適応とかに話が及ぶ。 しかし、発生を見ている目からは、 …

卵黄・発生拘束、そしてカンブリア爆発

脊索動物の形づくりに関して卵黄の影響が重要であろうと考えている。 卵黄の獲得、それに伴う形態の変化、 その形態変化と発生過程がどのように脊椎動物の進化に関わったのか? この、たとえば卵黄を少しずつ増やしていくような場合に…

形態形成運動と遺伝子発現3

淘汰圧は、おそらく様々な様式でゲノムにかかってくる。 そのうちの「それまでの正常発生を許容する」という淘汰圧、 すなわち発生拘束、が多細胞生物の進化には大きな意味を持つのだろうという話である。 たぶん、複雑な構造を作りう…

形態形成運動と遺伝子発現2

ゲノムに導入される変異は、正しい形態形成運動を保証するものでなければならないはずである。 それまで行なわれてきた形態形成運動を邪魔するような変異が残るはずは無い。 これが「発生拘束」という言葉で表される正体ではなかろうか…

形態形成運動と遺伝子発現1

正しい形態形成には正しい遺伝子発現が必要である。 これはきわめて正しい論理である。 しかし、これが「正しい遺伝子発現が正しい形態形成を導く」のような理解となれば、 これは少しおかしい理屈になる。 であるにも関わらず、 こ…

卵黄と細胞運動

卵黄を多く含み細胞が比較的大きい場合に 細かな形態形成運動に参加できにくいのではないかということを書いた。   多くの魚類や両生類の原腸形成運動時に、 植物半球の細胞は卵黄により動物半球よりも明らかに大きくなっ…

卵黄と脊椎動物

卵黄が多くなることにより、 エサを食べなくてもある程度発生を進めることができる。 だから、脊椎動物のように複雑な構造をつくるには 一定量の卵黄の存在は必要なのかもしれない。 ただし、脊椎動物のような複雑な発生過程を経るこ…

卵黄

先の「かたちまつり3」はいろいろと考えるネタがあり良い集まりだった。 その中で熊野さんの「卵黄の問題」が頭に残った。   私は、原腸胚での細胞数の多さが脊椎動物出現の原動力になったのではないかと考えている。 も…