期待・好み?それとも趣味・嗜好?
先日、羊たちの沈黙について書いた(https://hashimochi.com/archives/9952)。
羊たちの沈黙とレッドドラゴンは良かったが
ハンニバルライジングは期待はずれだったという話である。
ここに上がっていないもうひとつ、
「ハンニバル」について蛇足を承知で記しておこう。
この映画は、私の感覚的にはダイハード3に近い。
なんだろう、ちょっと無駄にスケールを大きくし過ぎたことで
レクター博士に漂う緻密さ・冷酷さ・計画性そして知性が
ただの派手なエンターテインメントに成り下がった感がある。
ということで、私の評価は高くない
(でもハンニバルライジングよりはかなりマシだと思うが)。
まあ、いちいち派手になったというところは
ただの雰囲気の問題として差し引いて考えても、
エンターテインメントに傾倒することで犠牲にしたものがいくつかあった。
一番大きなところは、ラストシーンで自分が繋がれている手錠を外すために
レクター博士が自らの腕を切り落とすところである。
このシーンは映像になっていないから
後日に、実は切り落としていなかったとすることも可能だが、
たぶん切り落としたという流れで見せる演出をしていると思う。
で、何が気に入らないか。
ボールペンの中の小さな金具で手錠を一瞬にして外せる人間が
なぜ自分の腕を切り落としたか?
たぶんそれは、クラリスとつながっている手錠を外す術として
クラリスを守るために自分の腕を落としたと
センチメンタルな状況を作りたかったのではないかと思うのだが、
これがあざとい。
ほのかな恋心やセンチメンタリズムを描くのは構わないが、
この手の映画でそれを前面に出したらすべてをぶちこわす。
私はそう感じたし、これでレクター博士の魅力はなくなった。
半減とか言うものではない。
いちどこれをしたら取り返しはつかない。
私にはそう思えた。
だから、次作は「ライジング」の方向に走るしか手が無くなったと感じるのだ。