暗くなるまで待って
オードリー=ヘップバーン主演の名作である。ゆっくりとラムを飲みながら鑑賞した。いま見たらちょっと無理筋だなと思うところも少なからずあるのだが、当初から気になっているところがある。個人的には「致命的だな」と感じるところである。
時代的に電話はダイヤル式である。今の子は見たこともないかもしれない。拙い日本語で説明するよりも、構造や使い方はネットで調べていただく方が良いと思うが、簡単に言えば、プッシュ式(スマホ世代にはこれも古いのかな?)だと、その数字のボタンを押すだけだが、ダイヤル式では円形のダイヤルを回して、それが元の位置に戻る間に発せられる信号の数を数字に置き換えている。1番だと戻る距離が短いので一回だけ信号が発せられるが、戻る距離が少しだけ長い2番だと二回、3番だと三回という具合である。ダイヤルを回して元に戻る時にジーっと音がするので、たとえば110番をダイヤルするときの音は、「ジッ、ジッ、ジ〜〜〜〜〜ッツ」である(こんな説明でわかってもらえるのかな??)。ちなみに、警察が110番なのは、最後のゼロを回す時に少し時間をかけてもう一度よく考えてもらうためだと聞いたことがある。今ではプッシュ(タッチ)するだけなので何番でも関係なくなってしまったのだが・・・。
さて、ヘップバーン演じる主人公は盲目である。そこに悪者が現れて主人公に嘘偽りを語る。その時に悪者は電話をかけるのだが、主人公が教えた番号ではなく、仲間内のところの番号を回す。これに主人公が気付かないのだが、どう考えてもあり得ない。ずっと盲目で過ごし、しかも自宅の電話だったらダイヤルが戻る時間で何番を回したかくらいわかりそうだ。仮に番号まではわからなくても1と0は絶対的に判断できる。もう一つ言えば、かける番号が異なる場合、その音のパターンは絶対的に異なる。主人公が悪者に伝えた警察の番号は279-0099である。対して悪者が実際にかけた番号は242-4598だ。先の理屈から0099と4598は、ダイヤルが戻る長さが決定的に違うことはご理解いただけると思うが、もうひとつ0099は同じ番号を2度ずつ回すことになるから、ダイヤルが戻るときの長さも同じ長さが2度ずつ繰り返すことになるが、4598は絶対にそうはならない。特に聴覚が研ぎ澄まされている盲目の方の場合、これを聞き流すことはあり得ないと思う。さらには、警察の番号を空で言える主人公である。何度もその番号を回しただろうことは容易に想像がつく。その音のパターンと異なるパターンに気づかないはずはないだろうと感じる。普通なら、「え、どこにかけてるの?」と問いかける場合だ。盲目の設定にしたにもかかわらず、ダイヤルが見えない位置にいるから掛けた番号がわからないというのは、目が見える人の発想だろうと思う。
実際のところはどうなのだろう?