脳 その2

さて、昨日の内容を前提に議論を進めると、ではなぜ人間の脳にだけこのようなシステムが構築されたのであろうか?脳の物理的大きさが短絡的に議論されることが多いと感じる。脳の重さと体重の関係性(アロメトリー)を見た場合に、どんな動物でも一定の割合であることが知られていた。だから、脳の大きさに淘汰圧がかかる(大きい方が進化的に有利だ)とすれば、体を大きくすればいいこととなる。ただ、体の大きさを増やすことに物理的な制約がかかってくる(大きさにも限度がある)とすれば、脳の大きさにも自ずから限界があることとなる。近年、脳の重さのアロメトリーに関して、哺乳類と鳥類はその他の脊椎動物とは異なることが知られることとなった。哺乳類や鳥類の脳の重さは、同じ体重の両生類や爬虫類よりも大きいことが示されてきている。だから、「哺乳類と鳥類は高度に複雑な脳を構築できた」とする。それも理由の一つではあるだろうが、では、脳の容量(神経細胞の数など)が増えれば同様のことが他の哺乳類でもできるようになるのか?それは違うと考えている。確かに、体重あたりのヒトの脳の重さの割合は他の哺乳類に比べて大きいのだが、それでも基本的には同じ回帰直線上にのっている。さらには、単純に脳の物理的な容量だけで考えれば、ヒトよりも大きな脳を持つ哺乳動物は存在する。

(つづきます)