脳 その3

昨日の続きです。

では、脳の容量以外の何がヒトの脳の働きを特徴づけるのだろうか?前提に戻るが、ヒトの脳はほとんどすべての神経が互いにネットワークを形成していて、そのために結果として脳が正常に機能できず、適応的に機能するためには必要な神経ネットワークを残して不要なものを消去する必要があると考えた場合に、生まれたての赤ちゃんは生物としての活動を何も行なえないこととなる。他の動物に当てはめたら、その動物種は絶滅せずに残ることができるだろうか?多くの動物は生まれ落ちた瞬間に自分で立ち上がり、自分で栄養をとりに動く。生まれてすぐに歩き走る動物も少なくない。そのためには、それら「本能」的な行動をする脳の神経回路はすぐに稼働できる状態で存在していなければならない。要は、無駄な神経回路を形成することなく、その目的だけのための回路がすでに成立していることが要求される。この「本能」の部分が大きければ大きいほど、使用可能な神経回路を生まれた時には持ち合わせていなければならないだろう。これはすなわち、その他の可能性を捨てているとも考えられる。人間の赤ちゃんは生まれた時にはほとんど何もできないばかりか、生まれて数年は単独では生存できないくらいに何もできない。これらは、その能力を有さないのではなく、あらゆる能力を有するがゆえに、結果的に何かひとつのことができないとも言えるのではなかろうか。

(つづきます)