面白い?

ちょっと前になるがEight-jamという番組を見ていた。クラシックの指揮者の特集をやっていた。指揮によって同じ曲でもまったく異なるという実践で、モーツァルトの「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」を指揮していた。最初は「つまらない」次に「面白い」という風に指揮するように指示された。

その話題はとりあえずここでは横に置く。なぜなら、それに触れるだけの知識を持ち合わせないからだ。ここで触れたいのは「面白い」である。番組中でたぶん全員が「面白い」を「楽しい」のようなニュアンスで捉えていたが、最初に「面白い」という指示を聞いた時にわたしは「興味深い」という風に捉えてしまった。英語で言えばfunnyとinterestingの違いだろうか。いつもいう話だが、言語によって意味を切り出すやり方が異なる。英語を話す人間にとってfunnyとinterestingはまったく異なる意味を持ち、互いに共通するニュアンスはないだろう。しかし、日本語では「面白い」という言葉が両者の意味を持ちうる。もっと言えば、日本語の「面白い」は二つのニュアンスを意味するのではなく、両方の意味を包含するとも言えると感じる。ことば論では「なま」を例示して議論したが、それと同様の話となる。だから、もし日本語の文中にある「面白い」を英訳する時にどちらの訳語(あるいはもっと別の単語)を用いるかで文章のニュアンス、もっと言えば英語の意味そのものが完全に変わってしまうだろう。これはもちろん英語(外国語)の日本語訳にも当てはまる。だから、翻訳能力は外国語の能力ではなく母国語の能力であると言われるのだろう。

と書いてみたが、わたしは基本的に関西圏に住んでいる。生まれも育ちも関西(神戸)である。だから「関西弁(神戸弁)」を母語とする。会話の最中に「それおもろいなあ」とよくいうが、もちろんその「おもろい」はinterestingの意味である。で、気になるのは、関西(神戸)以外の日本語で「面白い」を「興味深い」の意味で使うのだろうか?もし、関西弁特有の言い回しであるのであれば、上に書いた議論は英語vs日本語ではなく関西弁vsその他の言語なのかもしれない。