淘汰圧は何にかかる?4
で、脊椎動物である。
脊椎動物において「砂時計のくびれ」が作られる淘汰圧はどこにあるのだろうか?
咽頭胚は頭部形成がまさに完了した時期の胚である。
脊椎動物の脊椎動物たる所以は頭部構造を持つことにあり、
頭部構造は神経堤細胞によって成り立っていることから考えて、
進化の過程で神経堤細胞を獲得したことが脊椎動物の出現の意味であり、
脊椎動物である以上は、神経堤細胞を維持し続けることが条件となっている。
だから、神経堤細胞を維持できない変異は確実に淘汰されるし、
いかなる変異であっても神経堤細胞を維持できさえすれば、
この意味においては脊椎動物として存在可能だろう。
神経堤細胞がなぜ出現したのか?についても、
私は卵黄の獲得による卵の巨大化が大いに関与していると思っている。
卵の巨大化により原腸胚の細胞数が爆発的に大きくなったと言う方が正しいかもしれない。
この議論はたしかどこかに書いた記憶があるのでここでは省くが、
細胞数の爆発的な増加によって制御不能な細胞が生じ、
結果として何にも分化できなかった
(したがってずっと未分化なままで存在する)細胞が原腸胚期以降に出現し、
それが神経堤として頭部構造の構築に関わることとなったと考えるわけである。
この未分化(分化できなかった)細胞は、
原則的には卵と同じ状態を維持し続けているのかもしれないが、
とにかく幹細胞的に「(限度はあるだろうが)何にでもなれる能力を持った」細胞である。
この細胞が生じた意味として現在私たちは細胞周期の維持に興味を持っている。
一般に、分化するためには一度細胞周期を止めなければならず、
細胞周期が維持されている状態では分化ができないと言う考えがあり、
実際に人為的に細胞周期を止めてやると神経堤細胞ができず、
細胞周期を止めて分化過程に入らせる働きをもつ分子を、
神経堤細胞では積極的に抑制していることがわかっている。
もしこの考え方が正しいとすれば、
神経堤細胞になる領域の細胞周期を維持させる機構が
脊椎動物の発生過程には絶対的に必須であることとなる。
(つづく)