淘汰圧は何にかかる?2
たとえば卵の大きさやその後の発生過程は種によってかなり変わっている。
それは卵形成過程に変異が入ることをある程度許容されたからなのだろう。
脊椎動物の初期発生過程を「咽頭胚を形づくる過程」を考えれば、
形づくりの行程は卵形成から始まっていると考えて良い。
ある種では、未受精卵の中に物質の偏り(局在や濃度勾配)によって
将来の形の大きな部分が潜在的に作り込まれている。
しかし、別のある種では将来の形の情報は卵の中には存在せず、
受精してからゆっくり作り上げていく。
これは、見方を変えれば受精の時期のズレと考えても良いかもしれない。
卵原細胞から咽頭胚までを形づくる流れを考えれば基本的には共通だが、
受精により二倍体となり細胞分裂が始まる時期をズラすことによって
「(大きな意味での)生存」に有利となった可能性はある。
ある程度の形の情報を作り上げてから受精をさせることで、
一気に細胞分裂をして一気に形の原型を具現化し、
受精後の発生時間を大きく短縮できるだろう。
逆に、発生過程に時間をかけられる種類の生きものは
受精してから丁寧に形づくりを行なうことができよう。
おそらくだが大きくてある程度複雑な構造を作るメリットが
後者の場合にはあるのではないかと感じる。
さて、そのような卵や卵割の様式の差異をどこかで補正しなければならない。
違いのままで突き進んでいけば「砂時計のくびれ」は作れない。
この「補正」の過程こそが原腸形成運動なのだろうと考えている。
逆の言い方をすれば、原腸形成運動が違いを吸収できたからこそ、
卵形成や卵割などに変異を許容できたのだろう。
(つづく)