淘汰圧は何にかかる?1
この質問に明確に答えられることはできないだろう。
それは、どのレベルの進化を考えるかに依ると思うからだ。
ただ、個体発生の段階でかかる内部淘汰に関しては
「淘汰圧は現象にかかる」といえるのではないかと考えている。
淘汰という言葉の定義から見ても、
淘汰圧は抑制的にかかると考えるのは間違えていないと思う。
ただ、この「抑制的」という言葉は、
「この淘汰圧さえ満足させられれば他のところでは変化が容易だ」
と考えられることも示しているのではないだろうか?
ちょっと戻って内部淘汰について考えると、
短期的に見ると、個体発生過程で親と正確に同じ形を作らせられない変異を
除外する仕組みだと考えても問題ないように思う。
だから、個体発生過程を満足させられない変異は発生過程で死ぬ。
しかし、すこし長い目で見たときに、
ある特定の何かさえ維持していれば他の部分は変化を許容しているように見える。
脊椎動物でいえば砂時計のくびれの部分(咽頭胚の形)さえ作ることができれば
他の部分はかなりの範囲まで変化しえて、
その結果として魚から哺乳類まで作り上げられたのだろう。
私は、脊椎動物における「砂時計のくびれ」の維持に関わる淘汰圧のひとつは
頭部形成にあると考えている。
何だ、そんなの当たり前じゃないかとお感じだと思う。
そのとおりなのだ。
(つづく)
ツメガエルの発生で大量に死滅する時期は、やっぱり「砂時計のくびれ」のところなんですか。種内でも同じ理屈のように思ったのですが。それにしても大量に死滅してしまう材料で実験するのも大変ですね。
いままでの経験を思い出すといくつかの発生段階がありそうですが、顕著なのは原腸形成期と変態の時期です。
くびれの前段階から拘束があると考えられますね。どう外れてしまうとダメなのか興味がありますが、研究者はそういうとこは見ませんよね。
原腸形成は細胞の民族大移動的イベントだし、変態は四肢が生えるし鰓呼吸から肺呼吸へと体の構造と機能が大変革を遂げる時期だから、ほんの少しの齟齬があるだけで発生が上手くいかなくなる。たぶん遺伝子型が同じでも(変異が一切入らなかったとしても)ちょっとしたタイミングの違いで発生が成功したり失敗したりする過程だと思います。だから、これらの時期において何らかの事情であらたな体制にうまく移行できなかっただけじゃないかな?と思うのです。産卵数が爆発的に多いのも、捕食者に食べられるという理由よりも、発生過程を失敗するという理由の方がはるかに大きいんじゃないかな?ってのが橋本の感想です。養老孟司は、「(細胞分裂のように体をそのまま二つ同じ物を作ることをせず)わざわざ面倒くさいなぜ個体発生をするのか?」の問いに「個体発生をさせることで淘汰をかけている」といいます。良いゲノムの組み合わせになっているかどうかを、個体発生をさせることで検定する目的ということです。下手に「くびれ」とかけて考えるより理に適っているのではないか?と個人的には思います。まあ、それを「拘束」と言ってしまっても良いのかもしれませんが・・・・・。