意味とは何か?
「人間は、意味を担ったもの(記号)しか認識できない」とソシュールは言いました。意味とは何か?これは難問ですので私ごときがおいそれと手を出してよい問題ではないことは分かっていますが、成り行き上仕方ありませんので意味について少し考えてみましょう。
まず,階層性の視点から意味を考えると、「関係性」に意味付けするのは難しそうです。関係性を考えると、どうしても色即是空の問題が立ちはだかる。だから私は,ある関係性において要素がかたちを作りそれが閉じた時に意味が出現するのではないのかと思っています。要するに要素のみが意味を持つと考えるのです。最下層の要素は、人間の脳が持つ何らかの働きによって切り出して来たものであり、これはおそらく定義できないでしょう。色なんてものはまさにそれです。しかし、一旦最下層の要素が切り出され関係性を形づくって閉じたら、その関係性によって意味付けされ高次構造の要素となり得るのではないか。この視点において、その要素の意味とはその要素を形づくる下位の要素の関係性において規定されることになります。しかし同時に、「関係性が閉じる」ということは外部との境界を作ることとも考えられます。境界が出来るということは、そのものとそれ以外のものが成立する訳で、だからこそ要素となれるし、その他の要素と関係性を作ることが出来るのですが、こうなると、その他のものとの違いという意味での定義も可能となります。この「違い」はその他の要素との(上位の)関係性に依存しているはずです。同じ単語を用いるのは混乱するので、私はこの後者の意味を「意義」といいます。クリスタリンというタンパク質自体はそれを構成するアミノ酸の性質から意味を規定できます。しかし、それが消化酵素として利用されるのか眼の水晶体を作る時に働くのかは、クリスタリンがどの文脈におかれているかによってのみ規定される訳で、クリスタリンを要素とする上位のかたちの存在を要求します。だから、クリスタリンを辞書の中で説明しようとする場合、下位の要素からなる物理化学的性質の記載をする必要もあるでしょうし、上位のかたちの中での意義を記載する必要もあるでしょう。
ここまではまあ、ある程度は分かったような気になれる議論ですが、たとえばクリスタリンを要素とする上位構造が閉じた場合の意味を考えると、こんな短絡的な説明では済みません。これは難しいのでまたいつか!
まだ「意味の階層性」を読んおらず、このコラム↑もよく理解できていないので、かなりずれた感想かもしれませんが、「そうですか」という言葉の意味を思い浮かべてしまいました(。
①「そ」「う」「で」「す」「か」という要素が集まって「発話に対する応答」という意味を担う。
②相手の発話内容によって以下のような意味を担う。
・そのセーターかわいいね。ーそうですか?(謙遜、驚き)
・明日雨なんだって。ーそうですか。(相づち)
・あの車いいね。ーそうですか?(反論)
・君、あの企画じゃだめだよ。ーそうですか。(同意)
③声のトーン、イントネーション、顔の表情などにより以下の意味を担う。
たとえば「君、あの企画じゃだめだよ」に対する応答として
・(残念そうに)そうですか(あんなにがんばったのに…)。
・(不安げに)そうですか(やばい、どうしよう!)
・(平然と)そうですか(ま、いいや。次回がんばろう)
・(不満そうに)そうですか(結構いけてると思うのに…)
このように階層が上がるたびに意味が多様化していくイメージを持ってしまいました。でももし次の階層として「相手の言い方」などを考慮したら…。めまいがしてきました。とにかく「意味の階層性」を読んでみます。
この場合の「そうですか」は、まだ単純なゲシュタルトとして捉えられそうですね。
「そ」「う」「で」「す」「か」がこの順番にならんで「そうですか」となるけれど、この時点では意味をなさない。「そうですか」の意味は、お書きになっているように、相手の言葉や自分の態度・表情・イントネーション・・・など上位構造によって決められる訳で、クリスタリンの状況と同じような気がします。難しくなるのは、その要素自体が下位の要素によって意味付けられるかたちである場合じゃないかなあ・・・などと感じるのです。
ちょっと一筋縄ではいかなくなって来ました。「ゲノム論」を書ききれない理由がこの辺りにありそうな気がします。