連城三紀彦さん
早すぎますね。
推理小説の面白さは花葬シリーズから分かったように思います。
少なくとも私が「面白い」と感じるものはこれだったんだと気付くことができました。
美しい文章で丁寧に書かれた小説は、それ自体が名作でしたが、
連城さんにおいてはそこにとどまることはありませんでした。
というよりも、そんなことはご本人にはどうでも良かったのかも知れません。
とにかくプロットの凄まじいことはどなたも認めることでしょう。
特に初期の連城作品、大正や昭和の匂いを色濃く残した物語の数々は、
それこそ最後の数ページで風景が大きく変わります。
いままで見て来た景色はいったいどこへ行ったのだ?と思うほどの様変わりに
「こういう驚きを待っていたんだ」と心から感じたものでした。
奇しくも昨日のブログの内容に似た話ですが、
美しい論理展開に酔いしれていたら、
その裏側に全く別の論理展開がなされており、
たったひとつの出来事から裏表が一気に逆転するさまは
ただひたすら感動するしかありませんでした。
科学を志してからは「こんな論文が書きたい」と願うようになりました。
「こんな科学をしたい」と感じるようになりました。
誰もが普通に見ている現象や誰もが普通に見ている実験結果から、
全く別の筋書きを見せてみたいと思うようになりました。
論文も、事実を淡々と書くのではなく、
データの順番を考え、筋書きを考えて、
最後の最後にどんでん返しをしてみたいと思い続けています。
ただ、中途半端な研究ではこんな離れ業はできません。
誰もがびっくりするような結果を出せた時に
連城さんのような構成の論文を書いてみたいと思っています。
連城さん、それにしても早すぎます。