身近な進化かな?
食事には蛋白や脂質あるいは糖質など体の成長や維持に必要な栄養がある。
それに加えて食物繊維も必須であるということが知られている。
この食物繊維には、様々な意味はあるのだろうが、
その一つに、腸内の掃除のような作用があり、
それが腸がんを予防するのに必要だということである。
いつもながらこれには意味付けがなされている訳で、
食物繊維は分解されないから腸内を隅々まで掃除し、
それによって腸内環境を整えて云々である。
それは正しいのだろうが、
進化的に見たらやはりその説明は逆だろうと思う。
我々は栄養を摂取しなければ生きてこれなかった。
そしてそれは同じ生き物からしか得ることはできなかった。
その環境で、本来の理屈からは基本的な栄養素だけでいいものを
その栄養素を摂取するためには必然的にそれ以外のものも摂取せざるを得ない、
まあそういう環境で生きてきた訳である。
だからこそ、その環境に最も適したかたちに進化を遂げてきた。
その中で、例えば食物繊維を摂取するというのは普通の状態であり、
その環境の中でもっとも有利な状態にゲノムが適応してきたといえる。
だから、結果として食物繊維を摂取することでガンが減るということになった訳で、
食物繊維がその意味をア・プリオリに担っていると考える思考法が間違えている。
だから、口から取り入れる食べ物の基本的な組成が違えば
その食物にあったように進化を遂げてきただろうし、
極論すれば食物繊維を一切とらない環境で進化していたら
食物繊維とガンの関係はおそらく異なっていただろう。
これは、例えば亜鉛をとらないと味覚障害を引き起こすということにもつながる。
だから亜鉛は・・・・という議論ではなく、
あくまでも生物が進化の過程でたまたま偶然に亜鉛を用いただけのことで、
だから亜鉛が体の維持に必須となったというだけのことである。
さて、近年では食生活が変わってきたようだ。
すべてのものをサプリメントで補い、
ともすれば自然環境では絶対に摂取できるレベルではない量のビタミンをとる。
あるいは、サプリメントとしての食物繊維はとっているかもしれないが、
きちんと野菜からとることは減っているようだし、
ということは噛む頻度も明らかに減っていることとなる。
それら一つ一つの絶対的な意味での是非の問題ではなく、
我々が何百万年の間に、あるいは数億年の進化の過程で出会った環境とは
現在は大きく異なってきているということである。
たとえば、食物繊維の摂取不足でガンの発生率が高くなるってことは、
その生物(この場合はヒト)が植物のない環境にいきなりおかれて
その環境下で進化を始めたと考えれば、
いままで通りに食物繊維に頼っていたヒトは高頻度のガンを発生し、
そのゲノムを持つ生き物は淘汰されると考えても
あながち大きく間違えているとは思えない。
要するに、食物繊維不足で大腸がんを発症するとはそういうことで、
でも、その環境下でも何らかのゲノムの変異により、
食物繊維を一切とらなくてもがんの発症を少なくする「変異」は起こりうる。
こう見ると、現代病と呼ばれるもの、例えば生活習慣病などもその好例かもしれないが、
というのは、非常に短い時間の「進化」の一端をかいま見ているのではないのだろうか?
我々はこの環境で長い時間生きてきた。
この環境に適応してきた。
だから、いままでの環境が我々にとって最も適しているのだ。
栄養を摂取するにはいやでも食物繊維をとる必要があった。
そういう環境に我々のゲノムが適応してきたのだ。
だから、その環境を「科学」のにわか知識で変えたりしたら、
それは全体としてゲノムに何らかの影響を与えるだろう。
その意味ではやはり「今まで通り」が一番いいのだろうと思う。
病気や疲労など特別な場合を除き、
平時はサプリメントなどとる必要などないだろうし、
むしろ特殊な環境は自分たちのゲノムを苦しめているように思う。
最新の研究結果から健康にいいことがいろいろと分かってきているが、
どうもそれらは貝原益軒の養生訓に書かれていることと変わらなかったようだ。
まあ、そりゃそうだよね。