尊敬?
「私は谷垣さんを敵だと思っていない。先輩政治家としてリスペクト(尊敬)の念を持てる方だ。」
これは野田首相の言葉である。
いつ頃から「リスペクト」というカタカナ語を使うようになったのか私は知らないのだが、
気付いたら多くの有名人が普通に使う言葉になっていた。
で、この言葉の意味はいったいどういうことなのだろう?
英語のrespectの意味は分かっているつもりなのだが、
それと同じなのだろうか??
私はあえてカタカナ語を使うのは
従来の日本語では表せない意味を持つ場合だと思っている。
それにしてもなるべくなら従来の日本語を使う方が良いと思うし、
日本語にない意味を表すにしても、
新しい日本語を作り出せば良いとは思う。
誰も知らないカタカナを新たに導入するのと
新しく作った日本語を用いるのはまったく同じ苦労?だと思うからだ。
マニフェストという言葉が入ってきた時も
できれば「政権公約」のような日本語を努めて用いてほしかった。
レイムダックなんてその語の後にカッコ付きで(死に体)と書かなくてはならないくらいなら
最初から「死に体」と書けばいいのにって真面目に思っている。
まあ、それはさておき、カタカナの「リスペクト」である。
「尊敬する・敬意を表す」以上の意味があるのだろうが、それが私には分からない。
日本語で話せる言葉にカタカナを用いる人を「頭が悪く見える」と私はつねづね言っている。
これは、読めもしない感じを使いまくるのが好きではないのと同じ感情だと思う。
だから、まさか一国の首相ともあろう人がそんなことはしないものだと思っている。
だからこそ野田首相の言う「リスペクト」の意味を知りたいのだ。
ただ、自省も込めていうと、
専門用語のような単語はわりとカタカナを用いる。
われわれの商売も同様に、
日本語の文法の中に英単語をふんだんに盛り込んでいる。
「reviewerをconvinceしないと」って普通に話している。
reviewerはこれ以外に言いようがない。
たしかに審査員って言い方もできるが、それではピンと来ないのだ。
convinceも「説得」というのとは違うし・・・・。
だから、例えば原発の対応の際に「ベントする」という言葉が出たが、
これはおそらく技術用語であり、
もしそうならあの時の緊急性も鑑みて仕方ないとは思う。
という言葉も何となく自己弁護的な物言いになっている感は拭えないが・・・。
だから、たとえばレイムダックやコンセンサス、あるいはマニフェストが、
政治学などの専門用語として専門家の間で普通に使われているのなら
まあ仕方ないかなとは思っている。
でも「リスペクト」はなんとなくこれとは違うように思うのだ。
調べたことはないが、このようなカタカナ語は新聞記事にも頻出するのだろうか?
このようなとは、専門用語ではない、日本語にそれを表す言葉があるという意味だ。
ただ、専門用語は百歩譲って認めようとは思うが、
それはやはり専門家の間だけにしてほしいとは思う。
私が一般の人に対して講演をする時には、
カタカナ語を極力話さないように努力しているつもりだし、
それは思想信条というよりも、
むしろ専門用語であるカタカナ語は一般の人には通じないからという理由は大きい。
カッコ書きで説明しなければならない言葉を普通の会話に入れることは、
もちろん時と場合にはよるのだろうけれど、やはり愚行だと私は思う。