外国語学習法

友人の山崎さんからR25というフリーマガジンをもらった。その中にある「バベル式・外国語習得法」という高橋秀実さんの文章を私に読ませたかったようだ(R25, 2007 No.143, p48)。私は「ことば論」という冊子の中で英語の学習法を書いているので、参考文献としてくれたのだろう。

高橋氏の文章についてはそれを読んでいただきたいのだが、要点としては以下のような内容だと思う。「日本語なら通じるのに」と考えてしまうから英語を使えない。しかし、スペイン語圏に渡ると「英語なら通じるのに」って考えてスペイン語が使えない。スペイン生活ののちに再度アメリカに移動すると英語が使えるようになっている。もっとわかりにくい言語に触れることで、わかりにくい言語がわかりやすくなるということらしいのだ。高橋氏はこれを「言語理解の相対性原理」と呼んでいるそうだ。

何となく分かるような、でも分からないような・・・。これを「ことば論」的に解釈すると、日本語のかたちを想定することをやめた結果として、英語のかたちがすんなりと頭に入って来たと言えるだろう。それを介在したのがスペイン語だった訳である。

単語が少々分からなくても良いから英語の文脈をつかみ取る能力は、実は日本語のかたちで考えている以上は身に付かない。英語のかたちをおおざっぱに取り入れた上で英語を読んだり聞いたりすると、少々の単語がわからなくてもわかったような気にはなるし、これで本当に分からない場合は、その内容を日本語で聞いても絶対に理解できないのであろう。

話は変わるが、初めて英語で論文を書く時に学生が「英語力がないから思っていることがかけません」とよく言う。しかし、これは間違っていることが多い。ためしにその内容を日本語で書かせると、これまた全く書けないからである。要するに「分かっている気になっている」だけの話で、それを文章に書こうとすると論理に矛盾が出来て書けないのである。逆に、ちゃんと理解している内容については、間違いだらけの英語であってもなんとか書いてくる。本質的に言語とはこういうモノなのだろうと思う。