オーランチオキトリウム

石油を生産できる藻「オーランチオキトリウム」が筑波大学によって発見されている。

深さ1メートルのプールを2万ヘクタール作って培養すれば

日本の全輸入量に匹敵する石油が作り出される試算らしい。

 

具体的に調べた訳ではないので新聞記事以上のことは知らない。

これが実現すれば本当に素晴らしいことだと思うが少し懸念もある。

何年か前に、環境問題の流れで新しいエネルギーとしてバイオエタノールが取りざたされた。

いまはどうなったのか知らないが、

化石資源を使うことなく太陽光のエネルギーが燃料になるということで

計画段階ではとても優れた夢のある科学的な話であった。

まあ、簡単に言えば大規模に酒を造ろうって話だ。

ということは、酒にする為に穀物など炭素源がいる。

日本酒なら米、ワインならブドウ、焼酎なら芋や麦、

バーボンならトウモロコシといった具合だ。

で、実際にバイオエタノールの話が現実味を帯びると投機筋が動いて穀物価格が急上昇した。

我々の口に入るはずの食物の価格が上がったわけである。

 

この話を聞いた時に「そんなん、あたりまえやんか」と思った。

無から有を作ることはできない。

だから、バイオエタノールを作るにしても酵母の食べ物がなくてはならないし、

その、石油に匹敵する量の熱量に相当する以上の穀物を作らなければならないことは当然である。

だから、現在地球上で生産されている穀物に余裕がある場合以外には、

それが可能かどうか知らないが、

現在流通している食料に上乗せしてバイオエタノール用の穀物生産を行なってからでなければ、

このようなプロジェクトを動かせるはずもないのは自明の理だと思う。

クジラなど大型のほ乳類が増えると解散資源の減少につながるから

ある程度は生息数の間引きが必要であると科学者は指摘し続けているのに

「クジラはかわいい」「クジラは賢い」という理由で捕鯨の全面禁止を求める。

バイオエタノールと同じように人間の食料源を取り合いしなければならないのは自明の理である。

それを考えた上での政治的行動が求められるべきだ。

 

で、オーランチオキトリウムの話にもこのような落とし穴がないかと考えてしまうのだ。

この藻が何を炭素源として増えるのか知らないのでなんとも言えない。

新聞記事によると、水中の有機物を吸収して増殖するから

水の浄化にも用いられるとも言われているので、

もしかしたら、人工的には何も栄養を与えなくても構わないのかもしれないが、

無から有は作れないので、期待される石油の熱量に相当するくらい汚れた水でなければならない。

大量培養すれば自動車の燃料用に1リットル50円以下で供給できるようになるとのことだが、

これはあくまでも現時点での穀物(栄養分)相場からの試算であり、

日本の石油総輸入量に相当する熱量を穀物だかなにか知らないが

何らかの炭素源からまかなうとすればおそらくとんでもない量の有機物が必要となるだろう。

藻ということなので太陽光のエネルギーだけで石油ができるのだろうか?

それにしても、何かを作る為には何かを消費しなければならないとは思うので、

その差し引きがどのような計算になるのか興味はある。

もしも、太陽光エネルギーのみで石油をどんどん作ってくれるような

夢のような話が現実になるのであれば、

それこそ、原発などまったく必要としない世界が生まれるかもしれない。