好みの推理小説

 

私は、できるだけ物語の最後の方でどんでん返しがある推理小説を好む。

どんでん返しと表現すれば私の意図とは異なるものを想像される方がいるかも知れない。

一言でいえば、それまではまったく思ってもみなかった世界を

ある瞬間に見せてくれる物語が好きなのである。

だからそれは「本格推理」の範疇から厳密には外れているのかもしれない。

たとえば、奇妙な味と言われる小説のいくつかは非常に好みのものがある。

しかし、奇妙な味の小説が好きなのかと問われればYESとは言いづらい。

それは、この分野の小説には技巧に頼りすぎ奇をてらい過ぎたものが少なからずあるからだ。

わかりやすくて単純で、誰にでも気付く機会はあったのに指摘されるまで真相に気付けない、

そんな話がいい。

単純明快に読者の頭には絵が描かれていてその景色には一点の曇りもない。

しかし、その景色が瞬時に180度かわってしまうのがいいのだ。

状況を必要以上に複雑にし、だらだら長い文章でごてごてとこねくり回して混乱させられたら、

あとで真相を語られても感動を得られない。

頭に何の絵も描けないまま最後に謎解きをされても、パラダイム転換のような興奮は得られない。

それは、そもそも既存のパラダイムがそこには存在していないのだから。