そば湯割り

ミステリ談義が続きましたので目先を変えて酒の話を・・・。

 

関西人には珍しく蕎麦が好きです。

駅の立ち食いでもうどんは食べません。

理由は分かりませんが小さい頃からです。

私は両親共稼ぎの一人っ子(いわゆる鍵っ子)でしたから

夏休みなどは親からお金をもらって近所の定食屋さんへ昼食にいっていました。

そこでもうどんを食べた記憶がなく、とにかく蕎麦でした。

もちろん、そば粉が入っているかすら疑わしいようなものです。

蕎麦の香りに魅かれてなんて上等なものではありません。

 

大人になって酒を飲み出してから、

本当の蕎麦屋に出入りを始めました。

いわゆる手打ちの店です。

有名店から名も無き店までうろうろしました。

蕎麦屋ではゆっくり酒を飲めるかが大切です。

入って何かつまみをとって酒を飲み、

酒に満足した時に蕎麦を一枚いただいて帰るってのが定番です。

店によっては蕎麦をアテに酒を飲むこともあります。

 

さて、酒の話です。

蕎麦屋では基本は日本酒を飲みます。

私は「とりあえずビール」派ではなく

店によって飲むものを決めているのです。

で、梅田で十割蕎麦を出している店にもかなり美味い日本酒があるのですが、

誰かを連れて行く場合には私はその人に蕎麦焼酎のそば湯割りをすすめます。

こればかりは蕎麦屋に行かないと飲めないものですから。

その店にはそば湯ロックという面白い飲み物もあって、

そば湯を製氷室で固めたものを使って焼酎のロックを作るってものです。

そば湯はタンパク質の塊ですから凍結させる時に成分が凝固するみたいで、

飲んでいるとなんとも言えない「グニュッ」としたものが口に入ってきます。

私はそれが不快なのですが、これもまあここでしか味わえない体験ですので、

これも友人にはしっかりと(しかし無責任に)すすめます。

 

さて本題。

最近行き始めた兵庫駅近くの蕎麦屋の話です。

見た目は関西の街ならどこにでもありそうな普通の蕎麦屋で、

実際にその通りでお品書きにはうどんも素麺も丼ものもあります。

決して「こだわりの蕎麦専門店」ではありません。

昼時には家族連れや近所のサラリーマンでごった返しています。

この店、初めて入った時にざるそばを頼んでびっくりしました。

蕎麦がなんと「更科」なのです。

見た目は完全に素麺か冷や麦がざるに乗っているって感じの真っ白い蕎麦です。

話を聞けば二八との事でそば粉は八割入っています。

白い理由は蕎麦の一番粉しか使っていないからです。

ものの本によれば、更科は完全に水を切ってから食するものとあります。

だから、ざるを頼んで出てきたら

蕎麦を持ち上げては下ろすという見た目には無作法な事をしながらしっかり水を切ります。

その間に、水の切れたところで酒をちびちびやるって寸法です。

酒を飲む事をほとんど考えていない店なので、

もちろんお品書きには酒の肴は一切ありません。

だから、ここではまず天ざるをたのんで天婦羅で酒を飲みます。

天婦羅がなくなったら水を切りながら蕎麦で酒を飲みます。

次は、お腹に余裕があればもう一枚蕎麦をいただきます。

余裕が無ければ仕方ありません。

蕎麦屋には必ずある、かまぼことかニシンとかを単品で出してもらい、

それを肴に酒を飲みます。

 

あっ、まだ本題に入れていない・・・・。

で、本題なのですが、ここで面白い飲み物を覚えました。

それは、日本酒のそば湯割りです。

たぶん梅田の蕎麦屋でやったら出入り禁止になります。

そもそも何かで割るってことはアルコール度数の高いものを薄める事だと思うのに、

たかだか16度ていどの日本酒を等割にしたら下手をすれば8度を下回ります。

この発想にびっくりでした。

で、やってみると・・・。

更科だからなのか、見た目はポカリスエットっぽいほんのり白濁したそば湯で、

それで日本酒を割るのだからもう誰が見てもイオンサプライ!

味は表現しきれないのですが、

強いて言えば粕汁に近いというのが一番的を射ているような気もします。

アルコール風味の白湯のような飲み心地なので、

寒い外から入ってきてごくっと一杯飲んだら瞬間的に身体は温まります。

冬場は自動販売機で売ったらいいのにって思う感じです。

ワンカップの燗酒を飲むよりも、

缶入りのコーンポタージュやお汁粉感覚で自動販売機に並んでいたら

本当に温まりたい時には絶対にこれを選ぶと思うけどなあ・・・。

また横道にそれてしまった。

元に戻って、初めて飲んだときはかなりの邪道だと思い抵抗感も強く、

「こんなもの飲めるか!」的な気持ちでいたのですが、

これがなかなかなんともいえないいい飲み物になってきました。

最近では、最初に日本酒をそのまま飲み始めますが、

蕎麦を食べ切ってそば湯が出されたときからそば湯割りになります。

あとは、そば湯と日本酒のおかわりをもらいながら

ずっとそば湯割りを飲み続けます。

 

この店の欠点は営業時間。

6時10分には終わるので仕事帰りには飲みにいけません。

また日曜日も休みなので行けるのは土曜日のみとなります。

昼間はかなり混んでいてゆっくりできないので

結局は3〜4時くらいに飲み始め、

2時間ほどゆったりして帰ることになりました。

今週は金曜日が祝日なのですが、はたして開いているのだろうか????

開いていたら金土と二日連続ってのもアリですね。

 

また、ここのオヤジさんが強烈におもしろい。

この話は機会があれば書きます。

皆さんもぜひ一度お試しください。