断食3

断食をしていた頃、

何もする事なく(体力的に何もできなかった)家でテレビを見ていました。

その時に気付いたのはドラマでもCMでもなんと食事のシーンが多い事か。

どんな場面を見てもそのものの味が口の中(正確には脳の中)にあふれ

いてもたってもいられなかった記憶があります。

その頃にしていた事は、治ったら食べたいものをノートに書く連ねる事です。

もう覚えていないくらいたくさん書きました。

ただ、いまでも鮮明に覚えているものがあります。

それは焼きたてのフランスパンにたっぷりのバターを乗せてかぶりつく事です。

それ以来、ふとした時に急にこれを食べたくなり、

出不精の私がフランスパンを買いに出かける事があります。

 

もう一つ、空腹の極限でやってみた事があります。

それは、胃を壊しているのだから胃に何も入れなければ良いと考え

口でよく噛んでからそれを吐き出すという事です。

みかんで試してみました。

これが、まったく美味しくないのです。

味はもちろんみかんですが、

喉を通らないとまったく美味しく感じられない。

飲み込むという行為が味覚に大きな影響を与えている事を知りました。

そういえば、神経堤細胞に由来する味覚を近くする神経は

咽頭の内表面にも到達する事が知られているわけで、

のどごしという物理感覚的な刺激だけではなく、

何らかの味覚を喉が感じているのも

あながち間違いではないような気がするなあなどと思い、

意識ももうろうとしている中でも生物学を学ぶ学生らしい

納得の仕方をしていました。

 

あの時は本当に心身共に壊れるかと思うくらいにつらかったのですが、

そのつらいところだけ忘れて、変にいい思い出になってしまった感があります。

いまでも、年に何回かは急に思い立っ2〜3日の断食をすることがあり、

3日目には軽い立ちくらみを感じながら、

そういえばあの頃は立ち上がる度に立ちくらみしていたっけなどと

懐かしい気持ちに浸ることもあります。