かたちとは何か?ゴルフ
昨日テレビでゴルフの放送を見ていた。
いろんな場所から、いろんな体勢で球を打ってそこそこ良いところに落とす。
さすがにプロだと感心する。
で、ゴルフについても考えてみる。
ゴルフに関してはおそらく単純明快で、クラブフェースと玉の当たる瞬間にすべてがかかっているだろう。
さて、クラブを振ると一口に言ってももちろん腕だけの仕事ではない。
胸も腹も背中も、もちろん下半身もすべての筋肉が協調して成し遂げる動きである。
数百もの筋肉のひとつひとつが、ある強さ・あるタイミング・ある速度で動くことで、
クラブフェースとボールの当たる角度・強さ・速度を調整し、
それらのバランスがある一つのかたちになった時にボールはクラブに当たり、
期待通りの弾道を描いて飛んでいくのだろう。
あらゆる筋肉の動きが完璧でも、その内のたったひとつが狂えば
見た目はきれいなフォームであったとしてもクラブは思い通りに動かないだろう。
それらの筋肉の動きのすべては、クラブが適当な角度・適当なスピード・適当な力で
ボールに当たることを目的としているに過ぎない。
だから極論すれば、上半身も下半身も、その他のありとあらゆるかたちが基本通りではなくても
クラブとボールの当たる瞬間の関係が適切であれば思い通りに球は飛ぶはずである。
だから、ひとつひとつの筋肉は一見無茶苦茶に動いても、
全体として偶然にでも良いように補い合ってクラブが理想的な動きをすることもある。
おそらくこれがまぐれ当たりというのだろう。
いうまでもないことだが、身体の動きは脳の所作である。
脳からの指令一つ一つが多数の神経につながり、
それが多数の筋肉に伝搬してそれらを個別に動かすのである。
筋肉の動きは人によって異なるはずである。
筋肉量も異なるし、筋肉の質も異なるだろう。
日々の筋肉量の増減や成長もあるだろうから
同じ人でも毎日微妙に異なるだろうし、
だから、脳が一定の刺激を出しても
一つ一つの筋肉の物理的な動きが同じになるとは限らない。
脳はそれらすべての情報を瞬時に微調整できなければ同じ動作などできない。
運動に重要なのは反射神経としばしばいわれるが、
単純な反射神経で運動ができるとは思えない。
むしろ、神経同士の連絡や神経から筋肉に行く刺激、
あるいは筋肉からフィードバックされる情報の処理などすべての関係性が
たゆまぬ練習によって獲得され、その「かたち」があらゆる状況に適応できるように
瞬時にそして反射的にできるかどうかということであろう。
優れた選手は物心つく前からそのスポーツを始めている。
これは、子供が経つことを、歩くこと走ることを習得することと同じなのだろう。
ひとことで立つと言っても、子供にとったら大変なことであろう。
どこの筋肉にどのくらい力を入れたら身体がどのように傾くのか
その傾きを修正する為にはどの筋肉にどのくらいの力を入れなければならないのか、
それをありとあらゆる環境で行ない、「こう来た時はこうする」という対処法が
かたちとして脳の中に出来上がって初めて立てるのである。
歩く場合も走る場合も、お箸を持つ場合も何でも同じであろう。
だから、脳の働きが無意識に身体の動きにつながるように
あらゆる関係性を確立するのであろう。
タイガーウッズは、クラブの上で普通にボールを遊ばせる。
何も考えなくても、クラブのフェースがどう向いていて
それをどんな感じでボールに当てたらボールがどう跳ね上がるのか、
予想外のはね方をした時には次にどうクラブを当てたらそれが修正できるのか
普通に立って歩くくらいの感覚で身に付いているとしか言いようがない。
いま、この文章を書いている時にも横山やすしの「アドリブ」を思い浮かべている。
新しいことを瞬時にできる人はいないだろう。
それまでにその「かたち」を極論すれば脳の中に築き上げているかどうか
それをその状況に合わせて瞬時に出せるかどうか、
それにすべてがかかっているのかもしれないと思う。
一つ一つの筋肉の動きをいくら解析してもゴルフのスイングは見えて来ないし、
一つ一つの筋肉の動きをいくら制御できても、
ナイスショットにはならないのは当たり前なのである。