ゲノムの進化

ゲノムを対象とする進化の議論に出会ったことが無いと

以前にここで申し上げたことがあります。

ここでいう「ゲノム」とは,遺伝子に意味付けすること無く

遺伝子同士の関係性という「見えないもの」が本質であるという捉え方です。

だから,同じ遺伝子を用いても昆虫と脊椎動物で異なる構造を作るということで、

遺伝子が本質的な何かをしているのではなく、その文脈が遺伝子に意味を与え,

それがかたちの進化に主に影響を与えるとの考え方によるものです。

 

で,いつも登場する宮田先生ですが,

それまでの「形態の進化」から見れば

進化と言うものに分子系統は「ゲノム的」な感覚で切り口を与え、

そこからたくさんの知見を見いだしている画期的な研究であることは間違いないのですが、

これが,橋本のいう意味でのゲノムを対象としているかと言えば,それは違うと思います。

ここに最近まで気付かなかったのですが、

橋本の思う系統進化とは,相同な遺伝子の配列のわずかな違いを数学的に考察することで

種間の時間的な関係性をより正確に並び替えようというものであって

あくまでも多様なゲノムはそこに既に存在していることを前提に

ゲノム間の家系図をつくるということなわけです。

だから、そのゲノムがどのように生じたのかという疑問には答えられない、

このように橋本は感じてしまいます。

 

橋本の願望は、新しいゲノムが構築される「機構」を知りたいということになりますから,

どうも系統進化学と個体発生学の混ざったような学問(論理)体系を必要とする気がします。

以前に,系統進化におけるゲノムの考え方は「囲碁」で,

個体発生におけるゲノムは「将棋」だと書きました。

だから、囲碁と将棋を融合した体系(ゲーム)ができた時に

ゲノムの成立に関して何か見えてくるのかもしれません。

 

って,本当のところはどうなんでしょう?