分泌因子とあいまいさについて
このところ,その細胞数の多さから分泌因子によるあいまいな誘導が必然的に生じ、
その結果として脊椎動物(神経堤など脊椎動物を規定する細胞群)が生じたのではないか?
などという妄想を展開させています。
これは何も今に始まったことではなく,
ナガトモ君が研究室で行なった研究の成果から考えついた結論で、
純粋に個体発生の研究をしていて系統発生のことに思いがいたったってことです。
で、ここでもしかしたら誤解されているかもしれないと感じていることがあります。
それは,脊椎動物以外では「あいまいな」誘導が起こっていないと思われてないか?ってことです。
私は器官形成や原基形成など後期の発生のことはほぼ何も知りませんが,
その時期には多くの生物種で細胞数は跳ね上がっており、
そこで分泌因子の制御によって何かかたちを作るとすれば
その誘導は個々の細胞を規定するかたちではなく、
わりと大ざっぱなことになり得るとは思っています。
議論しているのはあくまでも初期原腸胚の細胞数で,
これから頭尾・背腹・左右の体軸を決め、外胚葉、中胚葉、内胚葉を作り、
それぞれの体軸にそった物差しを作っていく段階において
細胞数が100のものと1万のものでは同様な分子機構を利用しても
その発生学的な意味が異なるということです。
もちろんここでいう「意味」とは文脈によって規定されるものですから
分子機構それ自体は両者の間で何も変わっていないことは自明のことです。
かなやまさんのおっしゃる「入れ物」と「遺伝子」のたとえの通りですが,
私はこの「遺伝子」を、あえて「要素」と置き換え,
分子機構も閉じた結果として上位構造の要素足り得ますので
BMPの下流に存在する一連の分子機構(カスケードも含む)を
ひとくくりにして「要素」と認識することで議論しています。
この辺りは,ブログの初期にどこかで書いたと思いますし、
かたち論をお読みいただければある程度趣旨はご理解いただけると思っています。