思考実験
科学哲学の講義の最初に、ポール=ワイスの「思考実験」について話します。数年前に東大の内部での試験にも出題された問題です。東大生の8%しか正解できなかったそうですが、何を持って正解としたのか興味があります。というか、「正解」と言っちゃうと一つしかなさそうですが、論理さえ通っていればどんな回答も正解になりうると思います。
さて、高校生が興味を持ってくれそうな実験ってどんなのだろうかと考えますが何も思いつきません。「どんな実験」もありますが、できる実験の種類に物理的な制限があることも難しさに拍車をかけます。そこで思うのは、実際に手を動かす実験ではなく、脳みそをフル活動させるような思考実験はどうだろうということです。何かの事実を示してそこからいろいろと考えるということ。たとえば、この欄でも何度か書きました(他にもアイデアはいくつもあるのですが、文章にするのが難しいのでいつも使いまわしている例になってしまいます)が、「DNAにチミンが、RNAにはウラシルが使われている理由を考える」とか「DNAがゲノムに、RNAは遺伝子発現に用いられている理由を考える」とか、教科書にはただの知識として書かれている事実の意味を考えようってことです。学校の先生に聞けば「なんでRNAはウラシルでDNAはチミンなん?」はあるあるの質問だということで、こういう小学生のような疑問から思索を展開していくは科学にとって大切なことだと思います。ただ、こういう「あ〜でもない、こ〜でもない」と考えることも好きな人は好きだろうけど、興味のない人には「何が面白いかわからない」と好みが分かれるのでしょうね。でも、一度やってみたいなあと思っています。