新しいモデル

論文が公表され、報道もなされてそれなりに受け入れられたのかもしれないのだが、

このモデルが本当に受け入れられるときは教科書の記載が変わる日かなと思う。

そしてこれが一番難しい。

たとえば日本国内で受け入れられても諸外国で受け入れられなければ、

世界の常識としての専門書の記載が変わらなければダメなのだ。

もちろん日本発で新たなモデルを認めてくれることは可能だろうが、

それで科学が変わるということにはならない。

そのためにはこの論文が議論に上らなくてはならない。

批判であっても構わない。

論理的な意味での議論の相手にしてもらわなければ何も変わらないのだ。

 

今回のモデルの原型は13年前にアフリカツメガエルで提出した。

何度も受け入れ拒否をされ、論文として受理されるまでにも苦労したが、

それよりも公表したあとの方がつらかった。

発表から今に至るまでの間、

批判すら受けずに抹殺されてきたのだ。

無視である。

原腸形成運動に関する総説でさえ、

肯定・否定に関わらず我々の論文を引用することは無かった。

キリスト教原理主義者が「進化なんて無かった」とする論文を

進化学の関連雑誌に投稿したようなものだ、とこの状況を私はいつも例えている。

この例えが正鵠を射ているのかわからないのだが、

なんにしてもおそらく「相手にしても仕方ない」と研究者から判断されてきたのだろう。

だから、今回もその可能性はあるだろうと思う。

 

時代は少しずつ変わってはきているのだろう。

だが、今回の論文ですら受理されるまでにはさまざまな苦労をした。

査読者に無視されるのだ。

ひと月で返事があるべき査読に二ヶ月を越えても返事すらもらえない。

ようやく帰ってきたコメントには、我々の実験結果に関することは一切書かれておらず、

ただただ全面的に否定するコメントだけが並んでいた。

もちろんそこには論理など無い。

そのコメントにもなんとか返事を書き送り返したのだが、

その後もまた無視は続いた。

否定するなら論理的に指摘してほしい。

そうならこちらも論理的に反論できるし、

こちらが間違えているなら納得もできる。

だから今回の論文が、たとえ否定される形であっても

議論の俎上に乗ってほしいと切に思う。

 

我々の実験はきわめてシンプルだ。

大半の実験は高校の実験室で行なえる。

結果も解釈で意見が分かれるようなものではない。

世界中で誰でも、高校生であっても再現できるはずだ。

その自信があるからこそ、このモデルが真に正しいと強く言える。

どうしたら議論してもらえるのだろうか???

 

ただ、少し希望もある。

前回は国内の研究者ですら、橋本が直接お話しした方々ですら、

真面目に信じてもらえなかった。

いや、それ以上に、一部の偉い先生は完全否定的な態度を貫かれた。

特に両生類の研究者からは基本的には否定されたと感じる。

それが今回は、割と認めて下さる方が増えた。

これまで否定的態度を取られてきた先生方ですら、

おそらくトリやマウス、あるいはホヤなどの研究が進み、

その理解がこのモデルと符合することに気付かれたのだろう、

強くこのモデルを支持して下さっている。

時代が動いているのかもしれない。