葬儀を終えて

さすがにこの犯人は覚えてました。

クリスティはトリックメーカーではなく騙しの巧者(だと私は思っている)ので、

犯人が分かって読めばクリスティが散りばめた伏線がちらほら見て取れます。

「たぶん初読のときにはここで騙されたんだろうな」とか

「この書き方はミスリードしてしまうよな」とか思いながら読みました。

このような読み方をしたことがなかったのでちょっと楽しい時間でした。

やはり上手いなあ、企んでるなあってのが印象です。

ただし一点、あそこの地の文であれを書くのはちょっと反則かな?

いやあ、でもこれはクリスティって感じの小説ですね。

同じようにアクロイドやオリエント急行も読んでみようかな。

 

文庫の解説に折原一がすこしヒントを書いているのですが、

これは書かない方が良いと思います。

素直に騙された方がよほど気持ちいいからです。

中途半端なヒントから疑心暗鬼になってひねくれた読み方をしても

それでたとえ犯人を当ててもまったく面白くないと思いますよ。

例えば「意外な犯人」って書かれたら「意外じゃない」人物は

端からはずして考えますよね。

それに、以前にも書きましたが(https://hashimochi.com/archives/4678

「意外」ってのは読み終えて初めて感じるわけで、

読む前に「意外」っていわれたら結末は決して意外ではなくなる。

同様に「自分の妻まで疑うくらいに疑心暗鬼になって」と書かれたら、

妻は犯人じゃないってことですよね?

解説を執筆している本人は犯人やトリックにたどり着かないように

工夫をこらして書いているつもりなんでしょうが、

いらんことは書かない方がいいと思ってしまいます。