免疫

正月休みに親元を訪れた。

そこで久しぶりにテレビを見たのだが

なんともいえないCMが流れていた。

たしか空気清浄機のCMだったように思うのだが、

なんせ一度しか見ていないので別の何かかもしれない。

子供たちの映像が流れ、「子供は大人の半分の免疫しか持っていない」みたいな言葉が流れた。

だから「除菌しなければならない」という流れだった。

(この文脈なので空気清浄機ではなく、除菌効果を持つなにかのCMだったかもしれない)。

 

これはふたつの意味でマズいと思う。

 

ひとつは、免疫力が半分しかない子供たちを菌などから隔離して

いつその子供たちは免疫を獲得するのか?という問題で、

免疫は、ざっくり言えば自己とは異なる外来のもの(多くの場合は病原菌を想定している)に触れ、

それを異物と認識して次にそれが体内に入ってきた時に攻撃する力をさす。

だからワクチンを接種するわけだ。

免疫を持っていないからこそ、泥遊びをし、外界と積極的に触れなければならない。

大人の免疫力が強いのは、大人になるまでに多くの異物と触れてきたからである。

この意味においてこのCMの主張は本質的に誤っている。

 

ふたつ目の問題(と私が感じる点)は、

免疫というものに知識を持たない方達がこのCMの言葉を信じることだ。

様々な研究から、アレルギーにならないためには積極的に泥遊びをすべきと言われる。

過度な除菌は逆に問題であると専門家は口を揃える。

もちろん、破傷風など命に関わる感染性の病原体は存在する。

だから、傷を負えば消毒をするのは当たり前のことだが、

それ以上の菌に対して過剰な反応は意味がないばかりか悪影響がある。

雑菌が常識を超えて繁殖する環境はもちろん良くない。

だから「清潔に」というのは当然であるのだが、

多少の菌を口から入れてもそう簡単には死なない。

いや、食あたりくらいなら日常的にあっても特におかしいことではないと思う。

そういう菌に成長の過程で出会わなくて大人になる方がずっと怖い。

 

私の文章にはよく出てくる考え方だが、

人間もこの数千年のあいだは生きものとして今とそう変わらない生活を送ってきたはずである。

とすればゲノムもその生活に合わせて研ぎすまされているだろう。

生活の身近なところに様々な雑菌がうようよしている環境でいきてきて、

この数十年、そこから雑菌を取り払ったわけである。

これは、人間という生きものにとっては重大な環境変化だと言って構わない。

本来触れるべきものに触れないという異常な環境に我々はさらされている。

当たり前のことだが、最先端の科学が正しいのではない。

おばあちゃんの知恵袋のようなもの、

昔からの生活習慣が我々にとって最も適しているのは疑いない。

我が子を無菌の環境で育てる親は、

大切な子供を危険にさらしていると認識すべきだと、すごく個人的な意見だろうが、思う。

 

あのCMが流れていることに違和感を覚えない世界に

ちょっと恐ろしさを覚えるのは私だけなのだろうか?

 

ちなみに、以前にもご紹介しましたが

理化学研究所による「子どもを花粉症にしないための9か条」を以下に貼付けておきます。

①生後早期にBCG接種

②幼児期からヨーグルトなどの乳酸菌飲食物を与える

③小児期はなるべく抗生物質を使わない

④猫・犬を家の中で飼う

⑤早期から託児所等に預け細菌感染の機会を増やす

⑥適度な不衛生な環境

⑦狭い家に子だくさん

⑧農家で育てる

⑨手や顔を洗う機会を少なくする