ミステリ(作家)へのお願い?

あるミステリを読んだ時のことだ。

正確には覚えていないのだが、

たとえば謎が深まって読み手としてもハラハラドキドキしている最中に

「たしか港で気になるものを見たのだがそれが何かはっきり思い出せない」みたいに

登場人物の一人が話した場合を想像して頂きたい。

私は、その「何か」についてはそれまでの小説の中に書かれていなければならないと思う。

しかし、多くの場合そうではない。

あの時に何か感じたのは実はこうだったなどと、

解決編で後出し(あとだし)をして妙につじつまを付け平気に話を終わらせる。

これではダメだと感じる。

 

すでに読者は読んでいた。

だからその知識は当然にあった。

当たり前のように知っていたはずだった。

でも、ある視点からは見ていなかった。

だから、その意味では知らなかったし気付いていなかった。

そして、それが違う角度から明かにされた時に

違う意味付けをされたものとして見せられ愕然とするし、

良い意味で騙されて快感を覚える。

これがミステリの醍醐味じゃないだろうかと私見ながら感じる。

 

そして、これと同じ感覚が科学にも感じるから、

私は科学者をしているしミステリが好きなのだろうと思う。

まあ人それぞれに物差しは異なるから、

すべてのミステリ好きが私と同じ基準を持つとも思えないし、

すべての科学者が私と同じところで快感を覚えることもないだろう。

しかし、「何かを見たような気がする」とセリフを吐かせたら、

それにおとしまえを付けて欲しいものである。