ヒトとチンパンジーの違いって
そんなことは私ごときには分かりません。
ただ、一部の新聞で報じられているように、
ヒトとチンパンジーのゲノム配列を比較して特に違うところを発見したから
ヒトとチンパンジーの本質的な違いに迫ることができる、
みたいな考え方には明確に違和感を覚えます。
まず、ヒトとチンパンジーが進化の過程で分岐したときに、
それほど大規模なゲノムの再編成があったとは思えません。
おそらくは、それでも機能的には大きな変化でしょうが、
DNAの配列という意味だけで見たらそれほど大きな変異が起こったと思えない。
何か、チンパンジーゲノムとしてはもはや致命的な何かの変異、
あるいはそのような変異を回復させうるような別の変異が生じることで、
生殖の隔離であるとか、
あるいは生殖は可能でもゲノム同士が「交配」できなくなった(不和合性)とか、
そういうことが起こったのだろうと思ってしまうのです。
で、現存する生きものであるヒトとチンパンジーのゲノムにある大きな違いとは、
生殖的隔離や物理的隔離によってゲノムが独自に進化しうる状態になってから
徐々に蓄積されたものであろうと思うのです。
だから、現在のヒトとチンパンジーの違いを見るにはそれでも良いけれど、
それなら別に外部形態の比較で構わないとすら思えます。
ヒトとチンパンジーの本質的な違いとは、
何によってヒトがヒトとならしめ、
何によってチンパンジーはチンパンジーとなったのかということでしょうし、
それがゲノムのどこに書かれているのかというところでしょう。
すべてを否定することは私には到底できませんが、
どう考えても、その本質はヒトとチンパンジーのゲノムの中の、
非常に保存されている場所にあるように思えて仕方ないのです。