土曜日のレクチャーは
土曜日のレクチャーでは、「スライド(パワーポイント)を使わない」方法を行なった。
個人的には初めての試みである。
すべてはホワイトボードに板書しながら話をするという方法で、
どうなることかと思っていたのだが、
個人的にはすごく楽しめるレクチャーとなった。
(ただし、お客様がどうお感じだったか???)
話をしていると、いま話していることについて関連する別のことに話が移る。
あるいは、どなたかからのご質問に答えるかたちで、
その質問とは直接関係のないようなことが関係性を持ち始め、
その話に触れていくこととなる。
このように、見た目は「あっちにふらふら、こっちにふらふら」と
議論がさまよっているように感じられるだろうが、
実はあらゆるところが、「えっ」と思うようなところに結びつくことがわかる。
私が話したい「かたち」とは、意味の意味について考えなければならないし、
存在について、認識について、記号について、言語について、
そしてゲノムについて考えなければならないのだが、
それらは互いに密接に絡み合っていて、
その関係性を理解しない限り本質的な議論が始まらない。
これまでのように、スライドを用いる話では、
網の目のようにからんだ関係性の一つの糸だけを直線的に話すこととなる。
したがって、物語としては分かり易いのだが、
一つ一つの言葉の意味については詳細に議論できないままに、
あるいは正確に話すとその「糸」が二股に分かれる為に、
あえて不正確な説明で済まさざるを得ないこととなる。
それがとても歯がゆく感じていたので、
今回は、とにかく筋書きはなく、
ただ、頭に出てくる言葉をどんどん出していこうと決めていた。
時間的な制約もあった為に全体の一割にも満たない内容であったが、
意味・存在・時間・関係性・言語・ゲノムなどが思いもしない風にからみ合うさまが
おぼろげながらも垣間見えたのではないかと思っている。
このあとに、いつものレクチャーで深く議論したらおそらく理解は深くなるだろう。
いわば、大きめの縮尺で全体の位置関係を把握してから、
詳細地図で周辺のこまごましたところを探すというところだろうか。
一つ残念だったのは、レクチャーのあとにお客様とお話しさせて頂いたのだが、
その方のお話が非常に面白かった。
この会話をレクチャーの時に皆の前でできていたら、
理解はさらに深まったのだろうと思うのだ。
他人の討論を聞くことで自分の理解が深まることはよく経験する。
それをレクチャーの場で行なえたら楽しいのだろう。
何にしても個人的には貴重な体験でした。
雨の中をお越しくださったみなさま、ありがとうございました。
でも、次のレクチャーはまた一年後なんだよなあ。お越し下さるお客様の顔ぶれも違うから、せっかく大まかな地図を今回のレクチャーで描けても、次回は地図をお持ちでないお客様に対して話さなければならないというジレンマ。どこかで昨日の続きを密かにやろうかな。