最後の一行
最後の一行が決め手の小説って理想的だけど、
まあ、「一行」にこだわるとそれほどはないかもしれない。
最後の段落とか最後から数頁くらいでどんでん返しがあれば
「最後の一行」としてもいいかとも思う。
で、ポプラ社百年文庫の「顔」ってのを読んだ。
よくできた短編集だった。
どれもが不可思議な気分にさせられる雰囲気を持ち、
何となく欺かれるというか騙されるような気分になる
奇妙な味の小説の一つだろうと思う。
(もし、これからお読みになる方はこれ以降を見ない方が良いと思います)。
で、その中に納められているボードレールの小説ですが、
これは最後の一行が非常に面白い。
味があり、ユーモアがあり、ウィットにも富んでいると私には思える。
構成者も苦労したのだろうと思うが、
その一行が、次の頁を開いたところに来る様になっている。
で、幸運にも読了後に気が付いたのだが、
「その一行」がなんと本の帯に書かれていたのだ。
出版社(編集者?)はバカか?と真面目に思った。
たしかにその一文だけで素晴らしい。
だから、宣伝として使いたくなる気持ちは分からないでもない。
しかし、だからと言ってそれを書きますか?
もしミステリならトリックの重要なところを帯に書いているようなものだと思う。
なんだかもったいないような気がしてならなかった。
やっちゃアカンやろと思うことの最たるものだと感じた。
この本を、かなりの読書家である経理課長にお貸しした。先ほどお返しにきて下さったのだが、「こういう文章は苦手だ」と言われてしまった。私は「上手に作った物語だなあ」と思っていたので、ちょっと不思議な気持ちになった。しかし、私にもどうしても好きになれない文体があるので、「好みは人それぞれだなあ」とつくづく感じた瞬間だった。