曲軒

周五郎は曲軒とあだ名されたが、

これは「へそまがり」という意味らしい。

あんな素直な物語を紡ぐ人がへそ曲がりとはいやはやなんとも面白い。

へそ曲がりだからこそ心の機微を繊細に写し取れたのだろうか?

風太郎の「人間臨終図鑑」によると、

周五郎は「踏み殺しても死なない」くらい健康には一家言持っていたらしいが、

転けて肋骨を折ってから急速に衰弱したそうだ。

それまでの豪快な性格が晩年はやけに慎重になったとも言われる。

昔は良かったとは古来より言われる言葉らしいが、

それでも近年の若者のように小さくまとまっていなかったからこそ、

素晴らしい言葉を綴り続けられたのかもしれないなあ。

そう言えば先日、某大老と飲んでいた時のこと、

「酒を飲まない人間は魅力に欠ける」とおっしゃった。

自分がたくさん飲むからという訳でもないのだが、

何となく分かる気もする。