時代小説

「切腹」の原作を読んで以来、

何となく時代小説、しかも短編を読んでいます。

いまは山本周五郎の「花杖記」です。

 

これまで時代小説をほとんど読まなかったのですが、

いやあ、上手いなあと感心すること仕切りです。

これは時代小説とか現代小説とかに関係なく作者の文章力なのかも知れませんが、

それにしても時代小説ならではの言い回し、

短い文章で簡潔にすべてを表現する力をひしひしと感じます。

 

少し違うのですが、若い頃に中島敦の李陵を読んだときを思い出します。

あの短い文章の中に深い情景を描き出している日本語の凄まじさ。

まあ、たしかにあのような簡潔な語り口で現代文を書くのは難しいかも知れませんが、

それにしても大いに感心させられています。

 

時代(歴史)小説と言えば司馬遼太郎を思い出される方も多いかも知れません。

司馬遼太郎の小説はたしかに面白い。

しかし、日本語いう意味では個人的にはあまり感銘を受けません。

歴史教科書と小説の間と言った感が私には強く、

物語としての小説的技法が拙いように思うのです。

もちろん、それが司馬遼太郎作品の瑕疵になることはありません。

あれで司馬文学が成立しているのですから。

 

そうそう、山本周五郎と中島敦で思い出しました。

「花杖記」の中に備前名弓伝という短編があります。

題名だけでも何となく「名人伝」を思い浮かべませんか???