イモリ

イモリの仕事を進めています。

まずは遺伝子とり。

いま、イモリの遺伝子はほとんど分かっていないので、

ツメガエルで知られている特徴的な遺伝子をイモリでも取って来ようってことです。

で、次世代シークエンス技術のおかげで神経胚から数万のイモリ遺伝子の塩基配列がわかり、

その内の数十の遺伝子をクローニングしました。

今は原腸胚で発現する遺伝子を探索中で、

もうすぐ数万単位で塩基配列が分かると思います。

 

現在、ゆっくりとですが発現の時期と場所を確認しているのですが、

いやあ、面白いくらいにツメガエルと違います。

これまで、ツメガエルの論文の序論では必ずと言っていいくらいに

イモリも含めた過去の実験発生学から生じた問題が提示され、

その解決としてツメガエルでの分子生物学的解析がなされてきたのですが、

そんなもの、まったく違っていたということです。

 

私たちはツメガエルの原腸形成過程がイモリとは正反対の方向に進むことを明らかにしました。

すなわちイモリでは尻尾から頭の方向へと体を作っていくのに対して、

ツメガエルでは初めに頭ができ、そこから尻尾方向へと体を作っていくということです。

だから、当然神経の形成時期は異なるだろうし、

頭部ができる機構も違っているだろうと想像はしていました。

しかし、それ以外にももっと根幹に関わりそうな遺伝子の発現パターンが

ツメガエルとイモリの間で異なっている。

いやあ、本当にびっくりしています。

今は中胚葉系の遺伝子をゴソゴソ見ています。

次は神経系の遺伝子を見たいし、

頭部形成に関わる遺伝子も見てみたい。

なんだか子供のようにうきうきしています。

 

それから、詳細はここでは書けませんが、

もっともっと根源的な発生機構がイモリとツメガエルで異なっているようです。

だいたい、分類学的にはツメガエルは両生類の中でもかなり異端であり、

扱いやすいという理由だけから「モデル動物」になった経緯があります。

本当にこれを両生類や脊椎動物の「モデル」としていいのか、

少々疑問を持っている今日この頃です。

ただし、岡田節人の言うように「普遍性は多様性の中にある」のですから、

極端に異端であるツメガエルの知見と

これから分かってくるであろうイモリの知見を比較することで

本当の意味での「本質」が見えてくることでしょう。

楽しみだ。