粘り

先日、ある学生さんに「自己アピール」をしてもらいました。

すると「ネバネバしてます」って答えが返ってきました。

言いたいことは分からなくはないけど・・・・ちょっと笑ってしまいました。

 

で、またこの言葉を考えてみました。

まず思ったのはネバネバがstickyなのかviscousなのかってところです。

私たちはネバネバをこのどちらの意味にも使います。

使い分けているというよりは

私たちの言う「ネバネバ」にはこの両方の意味があると考える方がいいでしょう。

粘りがあるとは、セロテープの接着面のように粘着力があるとも

水飴のように粘性があるとも理解できるわけです。

で、おそらく英語を母国語とする人はこの二つはまったく異なる意味だろうと思います。

また、私たちは「粘り強く」の様な感覚も「粘り」という言葉に覚えます。

でも、粘り強いことを指して、英語でstickyやviscousを使っても絶対に通じない。

粘り強いは、まあ tenaciousくらいの言葉にするしかないと思いますが、

これは「強情」って意味合いがある言葉なので

そこから粘り強さを表現するという感じです。

 

私が提唱する英語の学習法は、

「英語を話す人は日本語を話す人とは見方・感じ方が完全に異なる」ことに端を発し、

英語の感覚を身につけることで「アメリカ人はこう感じているんだ」って思うことができれば、

それが英語を身体で理解することにつながるというものです。

アメリカ人も日本人も同じことを感じていて、それを表現する言語が異なるだけという理解、

あるいは、日本語から英語に変換する方程式があるという理解は

根本的に間違っているということです。

要するに、「粘り」という言葉が切り取ってくる感覚は日本語特有だと言うことであり、

べちゃべちゃネチャネチャ引っ付く感じや、スライムのような粘性のある感じと

「我慢強い」あるいは「しつこい」という感覚を共有することは

アメリカ人には絶対に理解できないということです。

 

面白いのは、クレッチマーの気質類型に粘着質という言葉があり

その元の言葉はEpilepsic(独)なのですが、

(ドイツ語に詳しくないので間違っているかも知れませんが)

Epilepsieが癲癇(てんかん)の意味を持ち、

また英語のepilepsyもまた癲癇の意味であることから、

元々はその辺りの意味合いを持つ言葉であるはずなのですが、

それを日本語に訳出する際に「粘着質」という言葉を当てたということです。

これをstickyやviscousで約し直すと多分もとの意味は消失することでしょう。

 

などなど、「ネバネバ」からいろいろと連想しました。

 

そういえばアメリカで「この薬品とあの薬品を混ぜて」と言いたくて

mixという単語を使ったらまったく通じませんでした。

mixとはまさに撹拌するような意味合いらしく、

二つを合わせる意味での「混ぜる」はcombineだということのようです。

ただ、辞書ではmixにも混ぜ合わせるような意味が載っているので

正確なところは分かりませんが・・・。