枕詞

「ぜんぜん気にしてないねんけど・・・」って枕詞が付く話は、

その内容を話者はすごく気にしていると言われる。

本当に気にしていない人は、

気にしていないということを意識しないからその言葉が出てくるはずがないという理由らしい。

この話を聞いてこの手の言葉を言えなくなった。

ただの笑い話でも、「気にしている」と思われそうな時には

「気にしてないねん」と言ったあとでくどいほどの言い訳をして

余計に「気にしている」感を醸し出してしまう。

 

さて、ずっと以前のことだが、

どこかのスナックの経営者が知人たちに保険金をかけ、

その人物たちを殺していた事件が盛んに報道されていた。

最初は容疑の段階だからゴシップ的に週刊誌やワイドショーの記者が集まり、

その社長にインタビューをしている様子がテレビから流れていた。

面白かったのは、その社長が集まる記者たちからお金を集めていたことが。

要は、スナックの客としてきてくれたらインタビューに応じるってことなのだろう。

 

で、先の枕詞に関連するのだが、

このインタビューを見ていて非常に興味深いやり取りがあった。

容疑者とされる社長は自信満々でインタビューに答えていたのだが、

その中で「あれ?」っと思う発言をしたのだった。

 

古い話なので正確ではないのだが、

たしか保険金をかけられて死んだ人にその社長が薬を飲ませていたような噂から

ゴシップネタに発展したように記憶している。

で、社長は「そんなことを言うのなら死体をいくらでも調べたらいい」と自信たっぷりに息巻いた。

で、次の台詞が「毒薬なんか見つかるはずはない、風邪薬くらいなら見つかるかもしれないけど」。

実は、深酒させたあとにビタミン剤と称して大量の風邪薬を飲ませ続けていたのだ。

風邪薬に含まれる成分とアルコールによってたまに劇症肝炎を発症し死に至ることがあることから、

それを利用した「殺人」なのだが、まさに語るに落ちたわけだ。

いや、文字にしてみると違和感はそれほどないようにも思うが、

風邪薬の話をしたことがとにかく違和感満載だったのは間違いない。

 

無意識に話したことなのだろうが、

でも心のどこかに意識しているからこそ出てきた台詞だったのだろう。

ふと発する言葉を分析するだけで犯罪捜査に役立てたり、

なんだかそんな研究もされているような気もする。

眼は口ほどにものを言うって言われるけど、

日常の何気ないひとことってのもなんだか怖いなあ。