発生生物学会

5月28日~30日に博多で行なわれた発生生物学会に参加しました。

毎度のことながら、遺伝子ネットワークとプロモーターの発表が多く、個人的にはほとんど面白くなかった。私は、分子生物学は細胞の中で閉じる学問だと思っています。たとえ細胞外に分泌される分子を取り扱おうとも、それが受容体に結合し、シグナル伝達経路をたどりながら何かの遺伝子の転写を制御するところで話は終わる。しかし実際に発生における形態形成とは、多くの細胞が作り上げる集団や社会の形成であり、ある遺伝子を発現する細胞を見る場合にも、その遺伝子が発現しているのはその細胞の癖のようなものであり、様々な癖を持っている細胞たちが社会を作っているという感覚で考えるべきであるというのが私の考えである。特定の遺伝子の意味を考えても何も分からないというのが私の取る立場である。だから遺伝子はあくまでもマーカーに過ぎず、それに意味付けすることからはなにも見いだせないとおもう。この意味で「揺らぎ」のセッションには期待していたし、その言や良しなのだが、やはり分子から揺らぎへとアプローチしようとするところに無理が見えると思った。

分子生物学はその立脚点から見ても生物機械論である。一つ一つの歯車に意味がなければならないし、相同遺伝子同士には意味がなければならない。その分子生物学を用いながら、「個々の遺伝子には大して意味はない」という前提を与えると議論自体が崩壊する危険性がある。近藤滋さんのチューリング波による形態形成も、分子を念頭に置くまでは非常にきれいな話になるのだが、そこに遺伝子を加え始めるといきなりしょぼくなる。これは、チューリング波によって支配される要素が分子ではなく細胞だからなのだと思う。

このような批判的考え方は多くの人がしている。では、具体的にどうしたら良いのだろうか???それが分かれば苦労はしない。