文章

現代童話という文庫本を読んだ。

たくさんの作家が書く文章でなかなかに楽しめた。

そこに中川正文さんの「口説の徒」という文章を見つけた。

著作権に触れるかもしれないので文章をここには載せられないが、

非常に興味深く読んだ。

簡単に言ってしまうと、非常にユニークで情緒あふれる小学生の文章があり、

それが教科書に採用されたのだが、

教科書に載った文章は大人が大人の目線で上手だと思えるような

型にはまったものに姿を変えていた。

両方の文章が並んで載っていたのだが、

なるほど、文章を殺すのはこうすれば良いのかと感心した。

生命力豊かに、泥まみれになって野山を駆けている子供が、

無理矢理にきれいな衣装を着せられ、

化粧を塗りたくられた結果として笑顔がなくなり

人形のような姿になってしまったようだった。

 

以前、依頼されて雑誌に文章を書いた事がある。

その時、編集者なのだろうがものの見事に文章が変わって戻ってきた。

表現が変わっていたのではなく、内容まで変わっていたのだ。

いや、これには驚いた。

文体という大層な表現を用いるつもりなどないが、

人にはその人の好みの文章がある。

文章の流れやテンポにもその人の個性が現れる。

それを簡単に変えてしまうばかりか、

おそらくはその編集者は「良い事をしてあげた」と思っているのだろう。

文章を専門に扱うプロがこういうことをする事にびっくりしたのだが、

なるほど、教科書に載っている文章からして同じ事をされているのだから、

ある意味ではその編集者は「正しい」教育を受けてきたのだろう。

でも、他人の文章に手を入れるだなんて、

私のような落ちこぼれには理解不能だな。