読点(蛇足)
昨日のコラム「読点」で、
「おせち・餅・雑煮を正月に食べました」の「正月に」を文頭に出すと、
「正月に、おせち・餅・雑煮を食べました」と、
「正月に」の後に読点を打たなければならないと何の説明もなく書いた。
それに関して説明不足だとのご指摘を受けたので簡単に説明する。
ただし、絶対に正しいと主張するものではないが、
多くの「作文技術書」に書かれている事ではある。
それは、日本語の文章を作る時に「長いもの順」に並べると分かりやすいことである。
どんな文章でも良いのだが・・・たとえば
「一度すてきなAさんが好きになった人にお会いしたい。」という文を考えると、
「お会いしたい」にかかる言葉は「一度」と「すてきなAさんが好きになった人に」であろう。
この場合、長い順番に「すてきなAさんが好きになった人に一度お会いしたい」とすれば
読点などなくても混乱なく読む事ができるというわけである。
例に用いた文章があまりよくなかったから実感できないだろうが、
実際に修飾する言葉を長い順番に並べるだけで文章は格段に分かりやすくなる。
もうひとつ、いま読んでいる本から例をだそう。
「私有のシャレー(スイスの屋根の突き出た田舎家)風の小屋にいた。」
この文章で書きたかったことはおそらく
『スイスの「屋根の突き出た田舎家」』だろうと思うが、
田舎家にかかる「スイスの」と「屋根の突き出た」のうち
短い方を最初に出したものだから読みにくくなっている。
さらには、語感的に「スイスの屋根」と一見して読んでしまうのも問題であろう。
だからこの場合は語順を入れ替えて「屋根の突き出たスイスの田舎家」とするべきであろう。
このように、語順に気を使うだけで分かりやすい文章にすることはできる。
だから「長い順番を入れ替える場合には先に出した言葉をあとに読点を入れる」と
作文の指南書には書かれているのだろう。
だから、先のコラムで
「おせち・餅・雑煮を正月に食べました」の「正月に」を文頭に出すと、
「正月に」の後に読点を打たなければならない
と書いたのである。
ちなみに、上にあげた例文の場合「すてきな」が「人」にかかるとも考えられるが、
人にかかるのであればまさに長い順番の通り
「Aさんが好きになったすてきな人」としなければ誤解される。
これは長い順番の他に「すてきな」「Aさん」の両者がくっついて読まれやすいことも
混乱されやすい原因にあると思う。
余談だが、漢字と仮名についても使い分けた方がいいような気はする。
漢字だけが連続したり仮名だけが連続したりする文章は読みにくい。
その場合は漢字と仮名のどちらでもかけそうな言葉を変えると読みやすくなる。
たとえば「一度」と「いちど」とか、「私」と「わたし」などは
直前や直後に漢字が続く場合には「いちど」「わたし」とし
仮名に埋もれそうな時には「一度」「私」とするという事である。
同じ文章の中では使い方を統一するべきだとの主張もあるので
漢字と仮名を使い分ける事が良いのか悪いのか分からないが、
使い分ける方が読みやすくなる事は事実だろうと思う。
以上は橋本がどこかで見聞きした事の受け売りであるので、
似たような内容がそこここに見られると思うがご容赦願いたい。