研究室訪問

たとえば来年度に進学する研究室を探す学生さんがいます。

何かの偶然に橋本の研究を見つけて、

関西方面の他の研究室を訪問するついでにいらっしゃることもあります。

あるいは、ポスドクの公募を出した時にその候補者としてご連絡をいただくこともあります。

 

このような方々とお話をするときの習慣が私には二つあります。

一つは、とにかくゆっくりと研究の話を聞いて頂くことです。

自分の研究を1時間くらいに簡潔にまとめて話し、

「ほら、格好いいでしょ?」なんてこともできます。

実際に自分たちが面白いと思っている仕事ですから、

その美味しいところだけを面白く話す方が聞いてくださる方には良いのかもしれません。

しかし、私は誰かにアピールするという意味でご訪問を受けることはしません。

これから数年間は仲間として一緒に研究をしていくかもしれない人に

橋本との研究生活はこんな感じだと分かってもらわなければ意味がないと思います。

ですから、「午後一番くらいにお越し下さい」といい、

そして夕方までとにかくゆっくりとお話をさせて頂きます。

話すことはもちろん研究の内容に関してなのですが

できるだけ、私の持っている研究に対する思想哲学について

その雰囲気だけでも分かって頂けるように時間をかけてお話し致します。

 

短時間に研究自体の話をすることだけでは誤解されると思っています。

1時間程度の時間で研究成果の話だけをすると

初めて聞く研究成果に「すごい!」って思われる可能性がありますが、

研究活動なんて失敗の連続だし、どのような流れでこの研究成果が得られたのか、

その時にどのような議論がなされたのかについてご理解頂かずに

その成果(格好いいところだけ)を見て頂くことでは

大きな誤解を持ったまま新年度から研究室に来て頂くことにもなりかねません。

ですから、誤解を避けるためにも可能なら何度でもお越しいただき、

橋本の考えや研究に対する趣味・嗜好を徹底的にご理解頂きたいのです。

それから、できれば研究室のメンバーとお話ししていただきたい。

研究室の雰囲気や橋本の悪口を聞いてほしいと思っています。

誰にだって利点も欠点もあります。

橋本はむしろ欠点ばかりの人間だろうとさえ思います。

それを知らずに研究室に入って来られたら苦労なさることでしょう。

橋本の欠点を知った上で開き直って来ていただけないと

後々に問題になるかもしれませんよね?

だから、研究室に人間にも「悪口を言ってほしい」と伝えます。

 

もう一つの習慣は、夕食をご一緒頂くことです。

軽くお酒でも飲みながら夕食をご一緒して頂ければ

橋本という人間が何となく見えて来ます。

そういう時間を共有することで、これから数年間一緒にいて大丈夫かどうかご判断頂きたいのです。

特に学生さんにとっては研究内容なんてあまり重要ではないと思っています。

どっちにしたって自分のやりたい研究は独立してからじゃないとできないし、

学生の間は何を勉強したってすべてが将来の糧になります。

それよりも、人間関係の方がよほど大切な選択肢になりうると私は思うのです。

良い悪いというのではなく、生理的に相性の合わない人がいます。

その人の研究室に入ってしまったら地獄ですよね。

 

研究内容を誤解されたまま、あるいは橋本という人間を判断することなく

新年度から研究室に新しく入って来られたら

「こんなはずじゃなかった」ってなる危険性がある訳です。

で、私は可能な限りそれを避けたいと考えています。

だから、とにかく時間をかけて研究室の雰囲気や橋本との相性を判断して頂きたい。

 

研究室を決めるまでには悩みに悩んだら良いと思います。

ただし、悩んだ上で決断したら、あとはとにかく悩まないで精一杯研究をすること。

これが一番大切なことだと思っています。

だから、初めてお会いする方にもゆっくりと時間をとって頂きたいのです。

 

先日も、現在募集しているポスドクの候補の方にお越しいただきました。

そして長い時間を一緒に過ごして頂きました。

この時間が大切なのだろうと私は思っています。

 

でも、周囲の心ない人は「結局は橋本が飲みたいだけなんだろ?」って言います。

その真偽に関してはここでは触れずにおきます。