講義・講演・セミナー

京大から生命誌研究館に移って以来、

様々な環境でお話をさせて頂ける機会に恵まれています。

「講師謝金など頂かなくても行きますよ!」ってのがウリで、

お声がかかればどこにでも参上し、どなたに対してでもお話を致します。

高校生にお話をし、老人センターでお話をします。

公民館に出かけたり、教員の研修所でお話をしたりします。

もちろん大学・大学院での講義や

研究機関でのセミナーなども当然ですがやっています。

 

さて研究者、あるいは研究者の卵(学生)にお話をする時に

いつも何となく決まった感じを受けます。

もちろん例外はあるのですが、概して私の話に共感してくれるのは

ポスドクなどの若手研究者であるということです。

一番冷たい視線を感じるのは学部学生相手に話した時だろうとも思います。

勝手に想像するに、学部学生は教科書で一所懸命に最先端の生物学を勉強していますから

たとえば遺伝子や分子で解き明かされる生物の成り立ちに興奮し

自分たちもその世界に飛び込みたいとわくわくしている人たちなのでしょう。

どこの馬の骨かも分からない変なヤツがそのような若い人たちに向かって

「遺伝子が登場しない形態形成や胚発生学の講義」をしても、

また、そいつが「分子で発生は分からない」などをほざいたとしても、

それを額面通り聞く受け皿を持っていないということなのでしょう。

対してポスドクや、大学院でも博士後期課程の2年や3年になると

生きものの研究が思ったようには動いてくれないことを実感して来ます。

その中で、橋本のような思想に半ば現実逃避をしたいのか、

それとも本当に橋本の主張に共感してくださるのか分かりませんが

とにかく、少しだけ変な話を受け入れる受容体を持つことができているのでしょう。

 

しかしながら、多様な価値観がなければ研究分野自体が転けてしまうようにも思いますので

学部学生くらいの若い人たちの中にも橋本のような考え方をする人が現れて欲しいものだと思います

(どうなってもその責任は負えませんが・・・)

ただ、周囲を見渡してこんな「変人」を育てる土壌が日本にはまだないのだろうとも思います。

この手の議論していたら必ず言われるのが「橋本がしなければ他には誰もしない」ということです。

要するに、橋本以外にこんな変人は存在しないと暗に言われているのでしょう。

でも、元来の怠け者なので自ら「よしっ!」と腰を上げることはなかなかできずにおります。

まあ、セミナーに呼んで頂けるところで細々と布教活動にいそしんでいるくらいが関の山です。

そのうちに大勢の変移(マジョリティーシフト)が起こるのでしょうかね???

でもいまだに、ツメガエルでも原腸「陥入」すると考えている研究者が大多数のようですし、

「陥入しない」という私たちの報告をご存知の先生でも

「でも、そこには本質的な違いはないよ」と平気でおっしゃる。

原腸形成の方向が異なるという事実から、

頭部の決め方が異なり、体軸の形成方向が異なり、神経誘導の時期が異なるなど

重要な発生現象の一つ一つが必然的にことごとく違ってくるという結果になることに

まったく気付かずにいらっしゃる訳で、また教科書もそのままという事態に、

若い人たちがどうやって問題意識を持つのか?

その方法論自体が存在しないのかもしれません。

むずかしいなあ・・・・・。