学生さん
よく、「学生がたくさんいる方がいい」とおっしゃる先生たちがいます。
私にはこの言葉がまったく理解できません。
たぶん、私には学生を同時にたくさん育てる能力が無いせいなのでしょう。
研究室に学生さんが一人もいないとさすがに寂しいですが、
正直に申し上げて1人いてくれたらまったく問題ないし、
常時2人いてくれればもうそれで十分です。
博士後期課程の学生さんに面倒を見てもらえるとしても
全員で3人が私の限度でしょう。
こんな実力で「教育者」の肩書きを持って良いのか疑問ですが
まあ仕方ありませんね。
それから、私は「先生」という意識が欠落しています。
だから、学生とも対等の議論しかしませんし
「教えてやろう」という気持ちなどさらさらありません。
私の方が多少はこの世界に長いので経験からのアドバイスはしますが、
我々の研究なんて「世界で初めて」のことを日々行なっている訳ですから
私が正解を知るはずなどあり得ません。
だから、いままでもずっと、議論をすることによって次の方向性を判断して来ました。
議論をしながら次を考えることしかしたことがありませんから
私が一人で考えて学生に次の方向を指し示すなんてこともできません。
ただ、神様は私のような研究者にも手を差し伸べてくださいます。
私と学生の二人でゆっくりと議論をしてきて
過去に何度も面白いアイデアが生まれて来たのです。
ツメガエルでは、陥入して体軸を後から前へと伸ばすのではなく
頭部の位置が最初から決まっていて、体軸は後方に伸ばすのだという発見も
学生との議論のときに出て来ました。
このように議論の前には私も学生もそんなことを一切思ってもみなかったアイデアが
話をしていく中で突然わき上がってくることを何度か経験しました。
だから、かろうじてこの商売を細々とながら続けられるのでしょうね。
まあ、だから学生さんも好奇心を持って一緒に考えてくれる人でないと困ります。
「橋本さん、次は何をしたらいいですか?」って聞かれても
「さあ?????」としか私には答えられませんからね。
2007年のMRIによる解析により
「陥入しない」モデルの正当性が実証されました。
MRIのような大層な機械を使わずに証明できたことの方が
実証されたことよりも嬉しいです。