知恵2

「創造」も人間の脳の所作であり、「知恵」の範疇に入れることができるだろう。想像力こそが人間の脳とAIとの決定的な違いだと言う人も多い。では、人間の脳は「創造的」なのだろうか。AIには「創造性」がないのだろうか?これを議論する前に、「創造」とは何かについて考えたい。

「想像」はゼロから1を作り出すことだと考える人もいるだろうが、これは論理的に間違えている。個人的に思う「創造」とは、「ハッ」というひらめきのようなものだろう。これはとりもなおさず新しい関係性の確立である。同じ要素であっても、その並び方とか要素同士の関係性を変えれば全体の形は全く新しいものとなる。要素の並べ替えによって生じたものが、新しいアイデアであったり新しい思想であったりするわけで、新しいアイデアや思想を見出すのに新しい知識が必要なわけではない。だから、組み合わせの可能性だけ新しい体系は潜在する。その可能性のほとんど全ては現実に対応できないだろうから具現化する前に淘汰される。しかし、ごくわずかな可能性で、一定の条件下で現実にも対応できる組み合わせも存在するはずである。それを思いつき、具現化する行為が「創造」ではないだろうか。人間の脳は、AIと比較して効率に雲泥の差がある。具体的な数字を存じないが、人間が1秒間にできる何億倍・何兆倍・何京倍、あるいはそれ以上の速度で計算ができるコンピュータが淘汰されない新しい可能性を見つける(すなわち新しいアイデアを想像する)方が確率ははるかに高いのではないだろうか。

AIの方法論は、人間の成長や進化と基本的に同じである。あらゆる可能性を試して、それをサーバーにあるすべてのデータと照らし合わせて、合わないものをどんどん削ぎ落としていき、最終的に整合性の取れた(淘汰されなかった)組み合わせを示す。だから、間違ったデータがサーバーにあれば、それが一定の割合を超えて多ければ、結論も間違ってくるのは事実だが、これは捏造されたデマや誤情報がどんどん拡散されたら、それがデータの大半を占め、それを元に判断する近年のネットと人間との関わりと同じだろう。この意味では、AIはサーバー上にあるすべてのデータにあたるが、人間は自分に入ってくる情報のみがすべてである。そこに偏向があれば、結論もおのずから間違えたものとなる。