50-50

大谷選手が50-50を達成した。正確には54-59だ。すごい!!

この成績には文句などまったくないのだが、これをイチロー越えとされるとちょっと抵抗がある。私はイチローが好きではない。だからイチロー贔屓ではない。単なるルールの問題を言いたい。

まずピッチクロックの問題がある。昨シーズンからピッチャーは18秒以内に投球しなければならなくなった。セットアップでいつまでも一塁ランナーを「牽制」することはできない。「牽制球を投げるぞ投げるぞ」と脅しをかけて、盗塁をさせないことはできない。18秒以内には牽制球を投げるかバッターに投球しなければならない。

次に牽制球の数の制限である。牽制球を何球でも投げていいわけではなくなった。基本的には2球牽制すれば、次は確実にアウトを取らなければ牽制球は投げられない。だから、ピッチャーは無闇に牽制球を投げられない。文字通り盗塁を「牽制」するための球は投げられず、確実にアウトにするためにしか牽制球は投げられないこととなった。

この二点だけで、盗塁する側にとって利点以外ない。

さらには、ベースの大きさも3インチ大きくなった。これは塁間がほんの少し短くなったという意味もあるだろうが、それよりもタッチをかいくぐってベースに触る可能性(確率)が大きくなる方が大きいと考えられる。タッチをかいくぐってもそこにベースがなければアウトになるが、本来ならなかったところにベースがあるということは、年間で数回分の盗塁成功に関わる可能性は否定できない。

これらを無視して、「イチローの記録を抜いた」というのはイチローに失礼だと思うし、イチローが今のルールでプレーしていれば100盗塁だってできたのではないかとすら思う。

この文章は決して大谷の成績を否定するものではない。なぜなら今年の盗塁の成績を見るとナ・リーグでは大谷は2位である。首位が67で3位が50であるが、4位以下は30個台である。だから、大谷の今季の盗塁数は決して否定されるものではなく、絶対的に賞賛されるに値することは間違いない。ただ、大谷を褒めたいが故に「日本人記録を塗りかえた」というのは正確さに欠けると思う。正しく評価してこその大谷選手の偉大さだろうと思うのだ。