竹内まりや

先日、竹内まりやを特集した番組が放送されていた。いまの言い方に直せば「竹内まりやをフィーチャーした番組」となるのだろうか。そもそもカタカナ語を日本語に用いることが好きではないのでどちらでもいいのだが、この「フィーチャー」を「フューチャー」と発音する芸能人が少なくない。こうなったらカタカナ語の好き嫌いの問題ではなくなる。featureは、私のような商売をしていると「特徴付ける」の方の意味を取りがちだが、辞書で調べると最初の意味として「(イベントや記事で~を)呼び物にする、特集する」「(映画で人を)主役にする、(歌手を)客演させる」がでてくるから、まあこの意味で日本語に用いているのは理解できる。ただ、futureは「未来・将来・行末」くらいの意味しかない。言いたいことがわかれば別にいいじゃないかという意見は理解するが、他人の癖のように、気になりだしたらどうしても気になるのだ。

さて、竹内まりやの話。アメリカにいたころ、偉い先生からいきなりお呼び出しをいただき、南カリフォルニア(アーバイン)から北カリフォルニア(バークレー)まで片道500キロを日帰りすることになった。まったく止まることなく時速100キロ巡航で10時間の運転になる。往路は、偉い先生に初めて会う緊張感もあって問題なく目的地に到達した。研究室で少し話をし、ご自宅に招待もしていただきそこそこ長い時間をバークレーで過ごしたのちに帰路に着くこととなった。すべてをフリーウエイでの運転なので、運転自体は問題ないのだろうが、その日は日付が変わってすぐに起床したこともあってどんどん意識が薄れていく。眠いというのではなく、意識が濁っていくというのか朦朧と麻痺していく感覚、脳が疲労していく感覚が本当にわかるのだ。車に乗ると音楽をかける。時には一緒に大声で歌ったりするが、この時には大好きな音楽ですら苦痛であった。Talking HeadsもTom Waitsも、Billy Joelもダメ。大好きなJazz pianoもダメ。その他、持っているカセットテープ(時代を感じるでしょ?)すべてが受け入れられなかった。その中で、友人が置いていったのか忘れていったのか、竹内まりやのテープがあった。私はそもそも邦楽を聞かないので興味の方向もそちらにはなかったのだが、これがすごく気持ちよく耳に入ってきた。繰り返し聞いてもまったく疲れなかった。結局、40分くらいのテープを繰り返し繰り返し5時間上聴き続けることとなった。なんだかわからないがすごい経験をした。すごくいい脳内物質が大量に分泌されたのだろう。すごくリラックスできたのだ。ただ、それ以降は一度も竹内まりやを聞いていない。やはり、精神的に余裕がある時(心身ともに限界に近づいている時以外)は、好みの音楽がいいなと思う。