ミステリ小説とミステリ映画 その2
私が理想とするミステリなのだが、これも何度か書いているように、ある瞬間、これまで見ていた景色がまったく別の景色へと大変換するようなものである。いくつもあるのだが、クリスティの「五匹の子豚」やマゴーンの「騙し絵の檻」なんかには研究にも通じる快感を覚えた。ここで「研究」というのは、橋本が好む研究であって他の研究者が好むものとは確実に異なるだろう。「ある瞬間に景色が変わる」という意味では綾辻の「十角館の殺人」があるのだが、これはまったく好みではない。
さて、「五匹の子豚」はまだしも、「騙し絵の檻」はその魅力を欠くことなく映像化できそうに思わない。この面白さをわかってもらうにはかなり説明をしなくてはならないだろうし、でも説明してしまったら面白さは失せるだろう。なぜなのか、それはじっくり時間をかけて読みたいところや立ち止まって考えたいところが映像だと待ってくれずに等速度で流れて行く。だから、十分な準備ができないままに一番面白いところに至ってしまうからだと思う。
で、個人的な映像化ミステリの好みとしては、いくつもあるのだが、パッと思いつくものは「情婦」と「十二人の怒れる男」だろうか。ミステリではないのだが、一瞬にして景色が変わる映画の筆頭は「スティング」で決まる。ちょっと古すぎるかな?なぜなのか理屈を考えたとしても、その理屈に合わないものでも好きなものはあるし、その理屈に合っていても好みではないものもあるので、考えることはほぼ放棄している。ただ、好きな映画を考えてみると、どんなに小さくても「どんでん返し」が入っているように思う。育ってきた環境に何かあるのだろうか??