進学校での講演(後編)
今回は、実験事実から仮説を考え、それを検証してみようといういつもの試みだが、今回ある種の手応えを掴めたら他にも試してみたいことがある。新たな機会を頂戴できた時などに橋本が考えた思考的な問題に取り組んでもらいたいのだ。過去に何度か書いたことがあるが、最低限の生物の知識以外に特殊な知識は必要とせず、その問題文の中に書かれている情報を論理的に思考することで生物に対する深いところに到達できそうな問題である。教科書的には複数の単元にまたがる内容が深いところで互いに繋がっていることを、参考書を読むことによってではなく、自ら思考することで気づいてもらえたら嬉しいと思う。実は、こういう思考問題をやることで脳の中に地図を描くことができ、それまでの知識を論理的に並べることができると思っている。知識は単体では意味をなさないが、何かと関連づけられることでその知識は重厚な意味を持つようになる。同様の思考を一定の時間間隔をおいてやってみることで、新たに獲得した知識を新しい文脈に置き換えて並べ直すことができ、そこに新しい意味づけがなされることで生物学の底に横たわる本質に触れることができると考えている。ゆっくりと時間をかければ普通の高校生にもできることだと思うし、可能であればやった方がいいと思う。ただ、教科書や参考書の内容を闇雲に覚えるよりははるかに効率のいい勉強法だと思うのだが、その効果を実感するのに最初すこし時間がかかる(教科書の丸暗記の方が最初は効果的に見える)ので、時間のない高校生や高校の先生方には取り入れづらいことだとも思っている。こういう、ある意味の思考実験を「優秀な」高校生にやってみてどうなるのか知りたいと思う。もちろん、ホモ=ルーデンスとして基本は「遊び」である。学習の基本は好奇心から始まる。好奇心を持てば勉強は「勉強」ではなくなる。好奇心をもつ対象を覚えるのに苦しみはない。ただただ楽しみながら頭の中に地図が描かれている。小さな地図や洗い地図が一度描かれさえすれば、それを拡張することや細かく書き込んでいくことはとても楽な作業である。高校生は生物の勉強ばかりに時間を取られて良いわけではないだろうが、この作業はすべての勉強に通じていると信じている。優秀な高校生にどれだけ通用するのだろう?「好奇心」と共に楽しみに待っている。