オーガナイザー(形成体)
シュペーマンとマンゴルトのオーガナイザーの論文から来年で100年だ。ということで、オーガナイザーに関する雑感。
オーガナイザーとは、「完全な頭部を含む背側体軸の形成を誘導する活性を有する両生類の初期原腸胚の機能領域」くらいの定義でいいと思っている。一般的には初期原腸胚の原口背唇部ということになっているのだがこれは完全に間違っている。というか、そもそもオーガナイザーと呼ばれる胚領域が単一の領域であるという理解がおかしい。
では「オーガナイザーとは?」と問われると答えに窮する。いや、自分の頭の中には明確な答えがある。しかし、それを語るにはまず両生類の原腸形成について語らなければならないのだが、ここからして大多数の人たちの理解と違っている。そして、それを文章だけで説明するのはかなり難しい。そもそも両生類の原腸形成過程は教科書に載っている動きとは完全に異なる。したがってオーガナイザー領域が形成される過程も、これまで言われてきたものとはまったく異なる。ここを理解しなければオーガナイザーの話ができない。
もうひとつ問題だと感じることがある。歴史的に両生類のオーガナイザーに相当する領域としてニワトリのヘンゼン結節があると言われているのだが、ヘンゼン結節がオーガナイザーに相当するかどうかにもかなり疑問を持っている。というもの、鳥類と両生類の発生過程を見た時に時間的空間的な胚領域の位置(の変化)が直接的に比較可能だとは思われないからである。しかし、両生類のオーガナイザーはシュペーマンのいう通りであり、かつ両生類のオーガナイザーは鳥類のヘンゼン結節に相当するという古い知見が正しいとの前提で議論をする人が少なくない。両生類の原口背唇部とトリのヘンゼン結節は収斂伸長運動の物理的な特異点として機能するという意味では相同的な構造と考えても構わないが(この機能のおかげでこれまでオーガナイザーであると誤認されてきたのだろう)、これら組織がオーガナイザーの定義である「完全な背側構造を誘導する能力」を有する構造として働かない以上は両者ともオーガナイザーとしては議論が混迷する。
この辺りを整理したいと思っているのだが、絵心もなければ文才にも恵まれていないので難しい。誰か若い研究者に伝えたら後世に語り継がれないものだろうか。