研究の質の低下?

日本の研究の質が落ちていると叫ばれて久しい。研究者の言い分としては、日本人研究者の生産性が落ちたのではなく、「他国と比較して」研究環境が下回ったせいであるという。研究成果の優劣は、論文数や論文の引用数などが他国と比較されて決められるため、日本の研究環境、特に研究費、が世界と比べてどれだけ貧弱なのかという魂の叫びなのかもしれない。たしかにこの20年間で大学研究費支出をみると中国では10倍、韓国で4倍、アメリカでも約2倍に増加しているが、日本ではほぼ横ばい(1.1倍)である。

また、個人的に感じるのは、研究者の雑用の増加である。研究者の仕事は一にも二にも研究なのだが、とにかくさまざまな方面の規制が多くなり実験に割ける時間が減っている。生命誌研究館のような民間の小さなところでもそうなのだから大学の研究員が研究に専念できる時間急激に低下しているはずだ。聞くところでも、研究・教育のみならずオープンキャンパスなどの社会貢献が義務となっている。

日本の博士課程の学生数も確実に減少している。これは若手研究者の数が今後も減り続けることに他ならない。特に優秀な学生は博士課程まで進学することなく、民間の大企業へと就職する傾向が強い。これが研究環境の問題なのかどうかについて短絡的に判断はできないと思うが、少なくとも魅力的な研究環境がなければ(研究をしたいと思いこの世界に入ってきているのに雑用ばかりやらされては)優秀な若者の選択肢には入らないだろう。時間をかけて頑張って就職できても研究費がなくてやりたい研究ができない。本当に興味を持って取り組みたい研究テーマがあっても、「選択と集中」によってはやりの研究テーマから外れたものには研究費が落ちてこない。優秀な若者がそんな道を選ぶことはないでしょ?