プロダクトアウト 1/3

経済学に「マーケットイン」「プロダクトアウト」という概念があります。マーケットインとは利用者側の目線に立って「何をするか」を考えることで、お客様の意見やニーズを汲み取って製品(プロダクト、具体的なものだけではなくサービスや会社の信念なども含めた概念)を開発する思想を言います。プロダクトアウトとは、売り手側の視点からサービスを考えることと言われます。「これだけ良いものを提供しているんだから、みんな買うはずだし買わなきゃアホだ」みたいな、まず製品(プロダクト、上記同様に具体的なものだけではない会社が市場に出す幅広い概念や思想信念など)ありきで経営を考える、まあ言えば押し売りの思想だとも言えるでしょうか。

料理人が店を出すと失敗するとよく言われます。その理由として言われるのが、店を始めようとするときの思想が「プロダクトアウト」だからだそうです。要するに、料理人には料理に対するこだわりがあり、「ここだけは譲れない」信念がある。だから「これだけの品質の料理をこの価格で提供すれば、他にこのクオリティで出している店はないから繁盛するはずだ」「この料理を出せば、1日最低何人の客が来て、客単価いくらで・・・・」という取らぬ狸の皮算用的な思想だけで開店を決めることになりやすいということです。そこに、以前から持っている「店を始める時にはここをああしたいし、あそこをこうしたい・・・」という思い入れが入ってくるともっと悪くなるわけで、「材料にこだわり、店の外観や内装にこだわり、調理場にこだわり、設備にこだわり・・・」と、そこにかかる経費は開店すればすぐに回収できるとなんの裏付けもない自信によって感情的に動かされるともう最悪ということですが、このような考えで新たに店を始める人が決して少なくないとのことです。逆に、市場調査をし、「この地域の客層だとか、その客がどのようなものを求めるか」ということを考えることが「マーケットイン」の考え方です。プロダクトアウトと比較されて普通に考えたらこちらが正解だと誰でも思うでしょう。しかし、おそらく「自分のこだわりや自己満足に等しいアイデア」を「お客さんが望んでいる」と錯覚するところにボタンのかけ間違いが生じます。「これだけの食材をこの価格で提供すれば客が来ないはずはないからすぐに人気店になれる」という妄想に囚われて疑いません。そこで、果たしてこれでお客さんが来てくれるのか?という科学的(客観的)検証を忘れているのです。

(つづきます)