レクチャー2

研究員レクチャーでは、構造論という哲学大系を元にして生きものについて考えてみようと試行しています。その流れとして、「かたち」の概念を概説し、次に「意味」について考えます。そしてそれらの立場で、たとえば長い時間で見ると進化を考えることになりますし、短い時間だと発生(卵から成体のかたちが出来上がって行く過程)を見ることになりますが、何にしても生きものをどう考えることができるのかについての議論になるのです。

今回は、構造論的にゲノムについてみてみようと考えましたが、やはり時間が短すぎたと思います。導入として客観性の危うさの話をします。「誰もいない森の中で巨木が倒れた時に音が存在するのか?」という命題を示して、客観とは主観であると論じるのですが、この言葉の本当の意味は、あるものがそこにア・プリオリに存在すると感じること(すなわち客観)こそが幻想であるということであり、全てのものはアプリオリには存在できず、その存在は相対性をもってしか規定できない、という考え方を示しているのです。あるものを規定するには、別のものと違うことを規定しなければならないのです。しかし、その本質に話は進められません。なぜなら時間がないからです。

だから、最初の20分ほどでこの議論はやめなければなりません。でも、ここを押さえてもらわないとその後の理解は進まないのです。何とも欲求不満が溜まります。