ゲノムとは何か?
ゲノムとは「染色体上の遺伝子が持つ全遺伝情報」と理解されているが、この表現だと遺伝子全てであると誤解されやすい。ゲノムとは、その種を形づくるための情報であり、ヒトゲノムとはヒトという種が成立する意味そのものとして捉えられるべきであろう。したがって、特定の種の全塩基配列が解読されたことで「ゲノムが分かった」というのは間違っていると言える。
では、ゲノムとはいったいどういったモノであろうか?ゲノムgenomeの言葉としての成り立ちは、遺伝子geneに全体性を示す接尾語のomeが付いたものであると理解される(染色体chromosomeのomeとgeneの合体したものとの説もあるが、chromosomeという言葉の成り立ちがchrome(染色性の)とsome(~体)が合わさったものである事からして、chromosomeのomeだけが切り離されるとは考えにくい)。このomeとは、全遺伝子という意味ではなく、すべての遺伝子がどのように働くのかについての総括的な意味を持つ。だからヒトゲノムはヒトの遺伝子のすべてではなく、種としてのヒトを作り上げる事のできる「全遺伝子セットが織りなす関係性」の総称である。